「吐いてもやれ」 子どもへの“スポハラ”なぜなくならない? 古田敦也氏「暴言ではなく、子どもの“成長したい気持ち”をくすぐれ」
「指導者が好き勝手な横暴を働いていることが許せない」 『ABEMAヒルズ』の取材に答えてくれたのは、剣道を習っている小学生の母親。彼女が憤りを露わにするのは、子どもらに対する指導者からのハラスメントだ。 【映像】「吐いてもやれ!」などの暴言、叩く・蹴るの暴力も 「体調不良を訴えても『吐いてもやれ』と、トイレにも行かせず防具も外させず、無理やり練習を続行させる。また、子どもに対し『バカ』『アホ』『チビ』など、身体的なことや侮辱的な言葉で罵ることもある」 この他にも、叩く・蹴るといった暴力行為や、お気に入りの選手を試合に出す“優遇”といった行為もあるという。女性は、こうした現状に怒りともどかしさを感じている。 「親も子も、指導者に逆らったら試合に出られないという不利益から、暴言や暴力、理不尽な要求があっても我慢して耐えたり、応じなければならない。いち保護者ではどうすることもできないのが悔しい」
“安全・安心にスポーツを楽しむことを害する行為”を指すスポーツ・ハラスメント=スポハラ。2023年度に日本スポーツ協会(JSPO)に寄せられた暴力行為などに関する相談件数は485件と過去最多の数字に。相談者のうち、およそ7割が小中高生だったという。
「スポーツをみんなが楽しめるようにするためには、裾野を広げなくてはいけない。ハラスメントはスポハラだけではなく、職場のハラスメントも人の命に関わる。そういうことを重く受け止めてもらいたい」 こう話すのはJSPOが設置する窓口で相談員を務める三輪紀子弁護士。 JSPOは2012年に、大阪の高校でバスケ部員が顧問から体罰を受け、自殺したことをきっかけに、メールや電話で相談ができる暴力行為等相談窓口を設置。寄せられた相談の内容によっては、指導者に対して「資格の停止」といった処分が下される。 三輪弁護士は、スポハラに関する最近の傾向について述べた。 「『自分が小さい時には暴力的な指導者はいたが、今は許されない』という問題意識を持っている親御さんが増えた実感がある。だが、現場の人や周りの親御さんも同じ意識を持っているかはケースバイケース。“意識の差”が大きくなってきている」 こうした中、三輪弁護士は正しい問題意識を持った親がチームで孤立してしまわないかと懸念も口にする。また、選手だけでなく指導者も葛藤を抱えていて、「これはスポハラに該当するのか?」という問い合わせも受けるという。 場合によっては、傷害罪など罪に問われる可能性もあるスポハラ。三輪弁護士は、指導者が学び続ける必要性を訴える。 「いわゆる“昔の指導”を受けた人の中には、厳しい指導のおかげで自分は技術力が向上した、強くなったと思っている人がいるが、ハラスメントのような指導方法が結果に結びついたという因果関係はない。暴力的な指導を受けた人が、自分もこれで強くなったと感じるのは暴力の連鎖であり、それを断ち切らなければならない」 今回の結果を受け、JSPO=日本スポーツ協会は、『ABEMAヒルズ』の取材に対し、スポハラの根絶に向け、JOC=日本オリンピック委員会といった国内のスポーツ団体と協力し、予防・啓発の取り組みを行っていくとしている。