アユニ・DとMISATO ANDOが語る、創作物への想いと楽しみ方、BiSH解散後の葛藤と光
お互いBiSHがなくなって、自分が誰で、何のために生きているか考える時期があった(MISATO)
ーアユニさんは、MISATOさんにアートワークを頼むにあたって、こういうものを作ってほしいというリクエストをしたんですか? アユニ:しました。この作品を作るにあたって、まず1回2人で打ち合わせしたんです。リンリンが私にインタビューをしてくれて。おそらく、『意地と光』で描いてくれたパンジーちゃんは、リンリンなりに私を投影してくださった作品だと思うんです。自分自身の音楽に対する想いとか、これまでの歴史とかもインタビューのときに伝えてはいたんですけど、リンリンの思うがままに作ってほしかったので、それをお願いしましたね。でも多分、自由に作ってほしいっていうのが1番難しいのかな? どうなんだろう。アートの方にとっては。 MISATO:両方難しいよね。 アユニ:そうだよね。 MISATO:でも、アユニさんと普段から喋ってきたらからこそ、ちゃんとできたのかなと思っています。解散して、お互いBiSHがなくなって、自分が誰で、何のために生きているんだろうと考える時期があって。お互い、精神的にも波があったのは話して知っていました。私はいつも自立した女性像を求めてこうなりたいと思っている部分があるんですけど、その象徴がパンジーちゃんなんです。アユニさんも、なりたい像を自分なりにずっと持っていると思うんですけど、本作の歌詞を見ていると、悩みながらもちゃんと前に進んでいるなと感じて。それで、アユニさんにパンジーちゃんを作ったんです。 ーMISATOさんにとって、パンジーちゃんは象徴的な存在? MISATO:元々、最初に絵の具を買った時に描いたのが、擬人化されたハンジーだったんです。ちっちゃい頃から、街の中でパンジーを見ると「ハーイ!」っていう感じで接していて。パンジーって、1個の根からたくさん生えているけど、みんな違う方向を向いて、違う形をしている。私にはそれぞれのパンジーが顔に見えるというか、人間的な存在感を感じていたんです。私は、より人間に近づけたパンジーちゃんを描いているんですけど、すごく美しいなと思っていて。その人にしかない価値観だったり、個性、生き方をしている人物像とすごく合致したので、パンジーちゃんを描いているんです。アユニさんは、人生でいろんなものを書き集めて作品を作っていくと思ったので、この先何色にでもなれるし、なんでも自分で作って進んでいく自分という意味を込めて、この白いパンジーちゃんを描いたんです。 ーちなみに、インタビューをした話、どんなことを2人で喋ったんですか。 アユニ:BiSHに対してどう思っていたかとか、どういう気持ちでやっていたか、解散してどういう気持ちで音楽をやっているかとか。結構今まで話したことのないような価値観のすり合わせをしました。ある意味、恋人関係みたいなものに似ているかもしれない。お互いを知って、お互いの情緒の波のすり合わせをするみたいな時間でした。 MISATO:インタビュー前に会った時はちょっと暗めのアユニさんだったんですけど、アユニさん自身がまた変わった時期で。BiSHのこととか、今の自分に対して前向きな印象がすごくあって、明るい景色が見えているんだなって感じました。 ー何かを突き抜けてフェーズが変わったというより、バイオリズムがあって、本作には、そのよい時期のアユニさんが記録されてるような感触に近いとも言えるんでしょうか? アユニ:感覚的にはそうですね。さっきリンリンも話していたんですけど、BiSHが解散してから、自分が何者なのかわからなくなった時期があって。リンリンも私も何かになろうとして、いろんなことに探検しだしたんですよ。色々やりまくった結果、BiSH時代の自分って、作り物でもなんでもなくて、あれが本当の自分だったと改めて気が付くことができた。その時に、今までやってきたことは1つも間違ってなかったし、すごく贅沢な時間だったことに改めて気づいて。初心に返ったという感覚が大きいかもしれないですね。 ーMISATOさんも、自分が何者なんだろうみたいな時期があった? MISATO:何者なのかと思ったり、たまたま生まれちゃっただけなんじゃないかと思ったりもして、本当に自分が誰なのかわからなくなっちゃった時期がありました。同時に、解散して、裸足で草原を走っているような解放感もあって。自分的にはすごい景色が晴れていたんですけど、なにもわからない真っ白い世界を、あてもなく走っているみたいな感覚で、自分って誰なんだろうってなっていたんです。逆に、私は自分には何もないとその時に思って。それを自分で認めることができたので、自分がだんだんと取り戻せていったんじゃないかと思っています。 ーあれだけBiSHで濃い期間を過ごしたからこそ、自分を見つめ直す時間は必要ですよね。でも、よく見つめ直せましたよね。 アユニ:いや、ヤバかったよね? 多分6人の中でもこの2人が1番ヤバかった。 MISATO:1回頭で考えるとかじゃなくて、直感でしか動いていないような2人なので。 アユニ:家族から大事にしてもらっているのに、勝手に家出して、勝手に怪我して、勝手に帰ってくるみたいな(笑)。そんな感じのタイプなんです。その時期に、改めて自分のおかしさに気づいたというか。変なもんは仕方ないなみたいな。なんて言えばいいんだろうね? MISATO:なんだろうね。でも、自分を探していたことには間違いないよね。探して出てくるものじゃないものを探そうとしちゃっていたというか。 アユニ:そうなんだよね。本質が見えていなかった。そうやって血迷っていた時期も、探検していた時期も、戻ってきた時期も一緒だったので、どの時期も共感し合っていたんだよね。 MISATO:そう考えると面白いよね。 アユニ:ね。不思議。それが自分の中で結構救いでしたね。