職場の同僚、友人、家族と「わかりあえない」ときはどうしたらいい?話題の映画監督と考える、解決への一歩
人的資本経営、ダイバーシティ推進、気候変動への対応……企業はいま、多くの課題に複数の視点から向き合うことが求められている。 【全画像をみる】職場の同僚、友人、家族と「わかりあえない」ときはどうしたらいい?話題の映画監督と考える、解決への一歩 “確固たる正解”が存在しない中、より良い方向に導くための鍵となるのが「対話」だ。 2023年秋に公開された『Dance with the Issue:電力とわたしたちのダイアローグ』は、対話を促す仕掛けが組み込まれた斬新な映像作品として、ビジネスパーソンの間で話題となった。 本作品の監督であるブラックスターレーベルの田村祥宏氏と、社会性と経済性の両立を目指す「ゼブラ企業」を支援するゼブラアンドカンパニー代表・阿座上陽平氏によるセッションを通して、対話とは何か、対話を通じていかにして「わかりあえなさ」と向き合うべきかを考えていく。 ※2024年3月8日、国際女性デーに開催された「 Wellbeing conference──これからの社会と私たちのウェルビーイング」(Business Insider Japan、MASHING UP共催)のセッションレポートです。
対話や内省を促す、これまでにない映画
──なぜ、エネルギー問題や気候変動を扱った映画を制作しようと思われたんですか? 田村:最初に「コンテンポラリーダンス」と「複雑な社会課題」を掛け合わせたらどうか、というアイデアが浮かびました。 僕自身コンテンポラリーダンスが好きなのですが、それは答えのないアートだから。鑑賞した後も、いろいろな意味を考え続けられるんです。 “共通性のある社会課題を扱った映像作品で、観た人みんなで考える時間を持つことができたら、アートを通じて社会に新たな価値をインストールできるかもしれない”──そうひらめいて、最も複雑な社会課題の一つであるエネルギー問題と掛け合わせることにしました。
エネルギー問題は「詰んでいる」?
──本作のキーワードの一つに「対話」があります。作品に対話や内省を組み込む仕掛けは、とても斬新ですね。 田村:『Dance with the Issue:電力とわたしたちのダイアローグ』では、アートフィルムとドキュメンタリーが組み合わさった約60分の本編上映、その後約20分のリフレクション(対話・内省)パートを設けています。 エネルギー問題って、現状、日本においては“詰んでいる”と言っても過言ではなく、自分はどうしたいのか自ら答えを見つけに行くしかない。それを感じ取る時間も作品に包含し、最後に対話するという流れです。 ──なぜ今、対話が必要なのでしょう? 田村:多くの人が関係して巻き起こっている社会問題は、立場も意見もさまざまで、何が正しくて何が正しくないかを決めるのは極めて難しいですよね。 そんな中で落としどころを見つけるには、みんなが対等な場に立って何を考えているのか、どうしたいのかを語り合うしかないと思うんです。 作中にも登場している経済産業省や東京電力の方の話を聞いた際、揃って対話の必要性を語られたのも、とても印象的でした。 阿座上:映画として(一方的に)情報を渡されると、それが自分の内側にこもってしまうんですよね。でも、対話によって人に話を聞いてもらったり相手の話を聞いたりすると、「自分の捉え方は人と違うかもしれない」という気づきが生まれて、新しい解釈につながります。 だからこそ、体験としての対話はぜひ組み込むべきだと考えていました。 ──実際のリフレクションパートでは、参加者はどんな雰囲気でしたか。 田村:特にファシリテーションがなくても、誰かが話し始めると一気に対話が進んでいましたね。 ただ鑑賞しただけだと、すごく気持ちがモヤモヤしますから。それは、作品というよりエネルギー問題そのものが持つモヤモヤです。 でも、そこに対話があると「この人はそう思うのか」「あのダンスはそう見えるのか」と、話が広がっていく。世代や職業が違っても、自分の感じたことなら語れるんです。 中にはさらに一歩進んで「自分のコミュニティでも上映会をしたい」「研修に使いたい」というお声をいただいたりもしました。