「血液調査の必要性」を明記し「未然防止の観点も踏まえて」と提言、専門家のPFAS評価書に環境省はどう動くのか
環境省などに「水質基準の設定を」
また、評価書はリスク管理を担う環境省などに対し、 <今回設定した TDI(注:許容摂取量) を踏まえた対応が速やかに取られることが重要である> との見解も示した。 具体的には、飲み水の規制をめぐり、現在「水質管理目標設定項目」に位置づけられているPFOS・PFOAをより厳しい「水質基準」のカテゴリーに引き上げることを指している、と姫野座長は説明した。 そうすることで、暫定の目標値ではなく、遵守が義務づけられる基準値ができる。基準値ができれば、企業や基地などの発生源での排出基準も設けられ、PFAS汚染対策の実効性が高まると期待できるからだ。
「健康防止の未然防止の観点も踏まえて」
評価書はさらに、リスク管理にあたる姿勢についても言及している。 <リスク管理機関においては、リスク評価における不確実性や健康被害の「未然防止」等の観点も踏まえて、リスク管理の方策等が検討されるものと考えます> リスク評価を担ったWGは、許容摂取量について「データが十分になかった」ため「100点満点とは言えない」(姫野座長)結果に終わった。だが、それにもとづいて規制するリスク管理機関には「安全側に立った対応」を求めたのだ。 見方によっては、則を超えての無責任な要請と映るかもしれないが、健康への影響を最小限に食い止めるための良心的な提言と取ることもできる。 また、姫野座長は記者会見で、どのような化学物質がどのくらい血液中に蓄積されているかを調べるバイオモニタリング制度の重要性にも言及した。たとえば、アメリカで2年に1度、5千人を対象に300もの化学物質を調べる国民栄養調査(NHANES)が行われるなど、先進国では導入が進んでいる。 「PFASに限らず、特定の化学物質の濃度が上がっているとわかれば、行政は汚染が起きていることに気づき、曝露防止策を取ることができる。その後も継続して調査すれば、対策の効果が出ているかどうかも確かめることができます」 姫野座長は個人的な見解と断ったうえで、こうした「上り坂と下り坂の調査」にもとづくデータを蓄積することで対策の実効性を検証できるようにすることが重要だ、と訴えた。