Number_i、「GOAT」を超える規格外の「BON」MV徹底考察 平野紫耀プロデュース曲で描いた昭和とオマージュ
Number_iの「BON」のMVが、5月27日の公開からわずか2日間で1000万回再生を突破した。公開3日で1000万回再生を記録した「GOAT」のMVを上回るスピードとなり(※1)、本稿執筆(6月5日)時点でも再生回数は約2300万回と数を伸ばし続けている。 【写真】岸優太・神宮寺勇太・平野紫耀、漂う風格 「GOAT」や2ndデジタルシングル「Blow Your Cover」のMVもそうだったが、今回の「BON」もストーリー性があり、一つひとつのシーンの意味を問いたくなるような映像作品だ。こうした繰り返し観たくなる内容も、驚異的な再生数に繋がるひとつの要因になっていると思う。 「BON」は“盆栽”をテーマにした楽曲であり、盆栽を自分たちに見立て、成長する過程やファンとの関係性を歌っているという。MVも根や枝を伸ばす盆栽で始まり、エンドクレジットでもバックに盆栽が映し出されている。 盆栽以外にも、MVには“日本”にちなんだものが多く登場する。特に顕著なのが、MVの後半だ。 団地が建ち並ぶ場所で、昭和時代によく見られた紙芝居屋に扮し、子どもたちに紙芝居を読み聞かせる平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太。その紙芝居のなかでも、茶室でお茶を飲むメンバーの姿が見られる。少し戻ったエレベーターのシーンではその扉が襖になっているのも日本らしさを感じられるポイントだ。本作は日本語に加えて10カ国語の翻訳字幕にも対応している。言語の壁を越え、海外に日本の文化を届けられる内容に仕上がっていると言えるだろう。 加えて、本作にはさまざまなオマージュが盛り込まれているのも特徴。茶道のシーンで最後にタライが落ちてくるのはザ・ドリフターズのコントであり、中盤で3人を再現した人形が空を飛んでいるシーンはおそらく『ドラゴンボール』だろう。隠れた仕掛けを探しながら、日本のエンタメのよさを振り返ることもできる。
『2001年宇宙の旅』オマージュ、昭和と紙芝居の意味……「BON」MVの考察ポイント
作中のお楽しみ要素をいくつか挙げたところで、遡って冒頭からMVの流れを見ていきたい。 前半は、クラブのような場所で人だかりを抜けてステージに上がる3人と、巨大迷路のなかを彷徨う3人がそれぞれ別軸で描かれている。迷路を抜けた彼らは、エレベーターに乗り込み、上昇して1015階(=10月15日はNumber_iの結成日)まで向かう。人形劇を挟み、次のエレベーターのシーンでは0階へ。岩山と砂しかないような場所で(長方形の黒い岩は映画『2001: A Space Odyssey(邦題:2001年宇宙の旅)』のモノリスのオマージュにも思える)ダンスを繰り広げる3人の姿は、ステージで踊っていた光景とも重なる。紙芝居のシーンを挟みつつ、3分27秒頃からは、冒頭で彼らの周りにいた大勢の人たちが消える場面が描かれる。これは「GOAT」のMVで、大人たちが最後に石像に変わったのとリンクしているようにも思える。 あくまで個人的な解釈だが、筆者は後半に登場する紙芝居で語られているのが、MV前半の内容なのではないかと思っている。映像の前半で表現されているのは、新たに0から創造して遠くまで飛んでいくNumber_iの軌跡であり、それは盆栽を自分たちの成長に見立てたという楽曲のテーマにも繋がる。後半は、そんな成長ストーリーをもって、“皆が待っている町々へ”向かっていく3人が描かれているような気がしているのだ。 「BON」のMVには、3人が表現するパフォーマンスやメッセージ性に加え、日本の文化、ユーモア、名作へのリスペクトなど、さまざまな要素が4分間に詰まっている。ラストで空に雷が光っているように、行く先には困難もあるかもしれない。負けずに世界で大きな花を咲かせ、日本のエンターテインメントの魅力を伝えてほしいと願う。こんな規格外なMV、Number_iでないと作れないはずだから。 ※1:https://realsound.jp/2024/05/post-1675230.html
かなざわまゆ