ビーストウォーズから四半世紀 『トランスフォーマー/ONE』音響監督・岩浪美和、“はじまりの物語”と運命的な巡り合わせ
日本語吹替版では、 中村悠一がオプティマスプライム役、木村昴がメガトロン役を務めている。ローカライズするにあたって「より受け入れられやすいキャラクターづくり」を目指した岩浪は、配給会社とディスカッションを重ねて二人を起用した。「二人ともすごくプロフェッショナルですし、 何度もご一緒させていただいているので、そのポテンシャルを理解した上でお任せしました。収録時も何の不安もなく、微調整を加えながら進んでいきました」
そして、オプティマスと共に冒険を繰り広げる女性戦士エリータ-1の吹替は、俳優の吉岡里帆が担当した。岩浪は、吉岡がナビゲーターを務めるFMラジオ番組をたまに聴いていたといい、「番組に声優がたびたびゲスト出演していて、吉岡さんが声優の仕事にものすごくリスペクトを感じながらトークをされている印象を受けたんです。そこで、彼女なら絶対にいいお芝居をしてくださるという確信が芽生えました」とキャスティングの裏側を明かす。 アフレコ収録にあたり、岩浪は吉岡の過去の出演作品を研究し、彼女に合ったセリフ回しを台本に反映させたという。「基本は吉岡さんが考えてくださったエリータ-1を収録する作業でしたので、作業自体はスムーズでしたし、2日間を予定していた収録も1日で終わりました。すると、吉岡さんから『明日もやりたい』と提案があり、翌日は1日目に収録したものを聞いて、100点のものを110点にする作業を行いました。エリータ-1の声も、ボイストレーナーの方と一緒に組み立ててくださったそうで、本当に真面目な方だなと思いました」
声優たちによる強烈なアドリブの数々で一世を風靡した「ビーストウォーズ」から27年、岩浪は国内外問わず数多くの「トランスフォーマー」アニメシリーズに携わってきた。「音響監督はアーティストではないですし、クリエイターでもないと思っているんです」と切り出し、「“職人”として、クライアントやお客様に求められることを最大限に引き出す形で関わってきたつもりです。最初に携わった『ビーストウォーズ』に関しては、ターゲットの未就学児に玩具を売ることが目標で、もとの素材でどうやるのが最適解なんだろうってことを一生懸命考えた結果、あの吹替版が時代とうまくハマったんです」と当時を振り返る。 40年続く『トランスフォーマー』シリーズの歴史に「多少なりとも貢献できた部分があるのかもしれない。そうやって、自分で自分を褒めてあげたい」と続けた岩浪。「シリーズが始まってから40年後、その出発地点に戻る作品に、また関わらせていただけたことは感慨深いですし、作品を愛してくださった皆さんにお礼を言いたいです」と打ち明け、「『トランスフォーマー/ONE』も、オリジナル版を崩さず、日本の『トランスフォーマー』ファンはもちろん、シリーズに初めて触れるお客さんにも楽しんでいただくにはどうすればいいのか、一生懸命考えて作ったつもりです。多くの人に受け入れていただけるといいなと思います」とアピールしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
画像:(C) 2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. (C) 2024 HASBRO