40代に愛用者多数のアパレルブランド「アメリ」、立ち上げ秘話とは|Ameri VINTAGE 代表取締役/ディレクター 黒石奈央子さん|STORY
アパレルは通常、ディレクターがいてその上に事業部長がいるんですよ。それなのに、最初から「ディレクターだけじゃなく社長もやってよ」と言われて(笑)。「全部好きにやっていいよ」と言われたものの、経営をしたこともなければ事業部長の経験もないのにどうしよう、と正直思いました(笑)。でももうやるしかないので、友人にアルバイトで手伝ってもらいながら、デザインから経営まで立ち上げの全てを1人でやりましたね。ちょうど10年前の、27歳の時でした。 Ameri VINTAGEの立ち上げ当初は、ヴィンテージとオリジナルアイテムを半分ずつ売ろうと思っていたんです。でもヴィンテージって1点ものだから、1点のために採寸して撮影して……と、とにかく効率が良くない。逆にオリジナル商品は数を販売できるので、圧倒的に利益率が高いんです。なので必然的にオリジナルの比率が増えていきました。ただ私もヴィンテージが好きなので、“VINTAGE”という言葉をブランド名にも残して、今もヴィンテージ商品も販売しています。 ――どんな風に事業を軌道にのせたのでしょうか? 当時、ちょうどInstagramが流行り始めた頃で、フォロワーは2万人くらい。その2万人のお客様に向けて、地道に発信して販売していました。アパレルを始めるにはかなり少額な初期費用でしたし、地に足のついた経営しかしないと決めていたんです。大きい額を投資したり大々的な宣伝もしませんでしたが、すぐに回収できて、赤字になることはありませんでしたね。 ちょうど、色々なインフルエンサーブランドが立ち上がっていた時期で。そういったブランドを見る度に、「こうしたらもっと売れるのに」という自分の中での“勝ち筋”はある程度見えていました。全ては、バランスが重要なんです。
「生産量・価格・デザイン・PR」、この4つのバランスが少しでも崩れると、売れない。最初に勤めていたアパレルでもすごく好きなブランドがあったんですけど、可愛いのに売れていなかったんです。それはPRが弱かったから。でも一方で、フォロワーが多くてPRは強いのに売れていないブランドもあって。それは商品が弱いからなんですよね。そのあたりがうまくマッチすると、絶対に売れるんです。そのバランス感さえ保っていれば間違いないという確信がありました。利益が出たら次の商品開発に充てる。それを繰り返していく中で、少しずつ事業の規模も大きくなっていきました。 撮影/沼尾翔平 取材/渡部夕子