永田町が恐れる「石丸新党」の青写真。大旋風を巻き起こした男が次に殴り込むのは!?
■3つのシナリオ とはいえ、石丸氏が政界の風雲児視される状況に変わりはない。国政挑戦への意欲を問われ、「選択肢としては考える。(衆院)広島1区。岸田首相の選挙区です」と答え、世をざわつかせるような政治家はそうはいない。 永田町も石丸氏の動向には神経をとがらせている。既成政党の支持率が低迷する中、無党派層の支持を集める石丸氏の動向が国政レベル、地方レベルにかかわらず、台風の目になりかねないからだ。 例えば、石丸氏が言及した広島1区。前回の2021年衆院選の岸田文雄首相の得票数は13万票余り。得票率は実に80%を超える。盤石の戦いといってもよい。 ただ、本気で石丸氏が挑んでくれば、首相も安閑としてはいられないかもしれない。「次の衆院選で広島1区は区割り改定となり、新たに隣接する府中町、海田町、坂町の3自治体が加わる。 ところが、直近の府中町、海田町の町長選で自民候補がけっこうな票差で連敗を喫してしまったんです。自民への逆風はすさまじい。そこに無党派層の支持を集める石丸氏が殴り込んでくれば、岸田首相といえども接戦に持ち込まれかねない」 石丸氏はどこに向かおうとしているのか? 前出の石丸選対関係者は以下のような3つのシナリオを予測する。 「ひとつは国政進出。165万票集めた石丸氏なら、参院比例区での当選は堅い。ふたつ目は都道府県の首長選挙。国会議員になってもしょせんは衆参713人のひとりに過ぎない。法案提出したくても衆院で20人、参院でも10人以上の国会議員が必要。ひとりでは何もできません。 その点、首長なら議会を解散したり、専決処分で自分の政策を通せたりするなど強い権限がある。首長選への挑戦は石丸氏の次の一手としてありえます」 だが、それよりも現実的な路線があると、石丸選対の関係者は言う。 「1番目と2番目のシナリオを融合させた3番目のシナリオが最も可能性が高い。それは東京で地域政党を立ち上げ、そこで得たパワーをバックに国政進出して力を蓄え、4年後の都知事選に再チャレンジするというシナリオです」 安芸高田市の市長を辞し、都知事選で落選した今、石丸氏はただの一匹オオカミ。新党結成には莫大なエネルギーがいるが、そんな構想を実行できるのか? 「都内で165万票を得た石丸氏が東京を拠点とする地域政党を立ち上げ、来年7月に予定される都議選候補を公募するとぶち上げれば、都議になりたいという人が数百人単位で手を挙げるでしょう。 石丸さんなら候補公募はネット、資金集めもクラファンでお手のもの。都議選の当確ラインは2万票前後で、石丸氏が都知事選での各選挙区の得票を分析し、上手に案分して候補を出せば、自民、都民ファースト並みの当選者を出せる。都議という足腰があれば、国政選挙でも十分に戦えます。 来年は衆参院選もある。比例を中心に数議席の確保は可能です。その比例名簿の1位に石丸氏を載せればいい。そうして国政、都政で一定の政治勢力を維持しつつ、4年後の都知事選に再チャレンジすれば、石丸さんは間違いなく最有力候補になる」 東京都の財政規模は一般、特別などの3会計を合わせると約16兆円で、その額はスウェーデンの国家予算に匹敵する。その執行権を握る都知事は小さな国家の大統領のようなもの。石丸氏本人もメディアに「首長に興味がある」と答えており、このシナリオはかなりの現実味がある。 「だからこそ、石丸氏の政治姿勢、国家観などを見極め、彼が国民をどこに連れていこうとしているのか、冷静な目で観察しなければなりません」(前出・鈴木氏) 石丸氏の政治家としての適性、そしてその真価が明らかになるのは、この熱狂的ブームが去った後だ。 写真/共同通信社 時事通信社