令和の二世帯住宅の特徴は?中目黒の120坪の土地に人気建築家が手掛けたゆるく交流できる家。相続税対策についても解説!
東京、中目黒。駅周辺におしゃれな店舗やカフェなどが並ぶ人気のエリアに、この二世帯住宅はあります。端正な2つのコンクリートの箱の中央に切れ込みがあり、思わず中へ引き込まれそうなたたずまいです。 雑誌『モダンリビング』で見かけた建築家・石井秀樹さんの作風を気に入り、家づくりを依頼することにしたという住み手夫妻。都心の一等地、敷地面積約120坪の土地に建てる新居に望んだのは、奥さまの母親と子世帯が互いに気兼ねなく暮らせる完全分離型の二世帯住宅でした。 【写真集】都心の120坪をどう生かす?建築家・石井秀樹による令和の二世帯住宅 加えて、夫妻からは「将来、どのような暮らし方をするかはわからない。相続税のことも考えて、片方の建物を賃貸利用、または土地の分譲など可能性をもたせた建て方にしてほしい」というオーダーがあったそう。 石井さんが導き出した回答は「生活スペースをきちんと分ける。でも、庭を介してゆるく交流できる二世帯住宅」。さらに、ライフスタイルの変化を見据えて、「2棟に分割も可能」という将来への道筋が備えられていたのです。 そんな新しい提案が盛り込まれた令和の都市型二世帯住宅。2022年のモダンリビング大賞も受賞した魅力あふれる住宅の外観から見ていきましょう。
奥行きと高低差のある120坪の敷地を生かす
なだらかな坂道に面して立つコンクリートの建物。約400㎡とゆとりのある敷地は間口が広く、奥へと進むにつれてすぼまりながら地盤が高くなっていく「じょうご」のような形をしています。 「奥へと引き込まれていくような魅力のある土地だと感じました。道路側には、ガレージと親世帯の建物を。その間の“切り通し”のようなところを抜けると、奥に子世帯がある、という配置を考えました」と石井さん。 このエリアは、建ぺい率が50%と厳しく、敷地の半分が余白として残ることに。そこで敷地の高低差を生かしながら、その余白と建物を組み合わせたプランを練っていったといいます。
親世帯と子世帯が外部空間でつながる間取り
道路側に親世帯、奥は子世帯と振り分けた二世帯住宅は、両世帯の玄関手前にあたる“風除室”でつながります。風除室(ふうじょしつ)とは、玄関前に設置する風を除けるための小屋(空間)のこと。 この家のユニークなところは、アプローチを進むメインの動線とは別に、親世帯の建物前からは左側の敷地境界に沿ってスロープが延び、奥の子世帯側へ迂回できる、もうひとつの動線が用意されているところ。 この通路(写真右側)はなんと幅2mもあるのです。なぜでしょうか? それは将来、親世帯と子世帯で土地や建物を分ける可能性を想定しているから。風除室を取り払い、前面道路から子世帯側に通路を延ばせば、旗竿状の敷地として分割することができるのです。(接する敷地の間口は2m以上必要)