なぜ巨人は広島に屈辱の3試合連続満塁弾を許したのか?
各社の報道によると、試合後、原監督は「選手は懸命にやっている。我々がしっかりと受け止めて指導していくということが大事」と、自戒をこめて、この場面を振り返ったという。3試合連続の満塁被弾の屈辱を巨人が味わったのは史上初である。 3試合連続満塁弾はプロ野球タイ記録で過去に3ケースある。 1950年の中日、1981年の阪神、1991年の広島以来、31年ぶりの快挙で、その1991年の広島の3試合連発は、巨人、中日、阪神とまたがっての5月の3試合で、小早川毅彦氏、野村謙二郎氏、植田幸弘氏が放っており、その年、山本浩二監督に率いられたカープは優勝している。 この3試合の満塁弾を振り返ると、すべて四死球絡みである。 初戦は延長11回に7番手の菊地が、一死から坂倉を歩かせ、二死一、二塁から代打の長野にも四球でつながれ、途中出場の磯村に満塁弾を許した。 第2戦も3回に5連打で3点を奪われ、なお無死二、三塁から2番手の戸根が坂倉に死球を与えて満塁となってからの長野のホームランである。つまり警戒心が強すぎて攻めきれずの自滅だ。 そしてもうひとつの傾向がインサイドのボールの少なさだ。 磯村には、初球のスライダーの失投。長野には外のスライダーでストライクを取ったあとの外のストレート。「インサイドがイコール攻める配球ではない」ということを元千葉ロッテの評論家の里崎智也氏は説いているが、あまりにもインサイドのボールが少ないので、広島の打者は臆せず踏み込んでフルスイングしていた。 打者に向かっていく攻めの姿勢が見られないのだ。 巨人でのコーチ経験のある現・新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏も、その背景をこう分析していた。 「打線が点を取れないので、1点もやれないという心理状態になり、バッテリーに余裕がなくなる。コントロールを気にするあまり、厳しいコースを攻めて、それでボールとなり、カウント負けして、失投が生まれやすいという状況となる。典型的な悪循環。打者に対して攻めて配球で踏み込めないボールをうまく使わねばならない」 満塁被弾の呪縛を解くには、バッテリーのメンタル面へのアプローチも必要なのかもしれない。原監督が自戒したように監督、コーチが、投手の「打たれたらどうしよう」という恐怖感を取り除く作業だ。 今季は、赤星、山崎伊、堀田という若手を起用する異例のローテーションでスタートした。高橋、戸郷、山口ら昨年の実績組は、若手が壁にぶつかる時期に出てくればいいという計算もあったのだろう。だが、高橋は、いまだに1勝止まりで、メルセデス、新外国人のシューメーカーも軸になれず誤算が続く。中継ぎに至っては、故障や序盤戦の酷使により、中川、鍵谷、大江、畠といったメンバーが揃わず勝利方程式が作れない。勝ち負けに関係なく注ぎ込んでいく継投策が裏目に出て救援防御率4点台の崩壊を招いている。井上や、この日の山本らの新戦力を試しているが、救世主としての計算は立たない。 原監督は、このピンチをどう切り抜け、立て直すのか。巨人の5位も借金「4」も、高橋由伸監督が率いて3位に終わりクライマックスシリーズのファイナルステージで広島に敗れた2018年以来となっている。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)