新たに生まれ変わるシリア…アサド政権崩壊後の現状をシリア人ジャーナリストが語る
TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。「Newglobal」のコーナーでは、アサド政権崩壊後のシリアの現状を紹介しました。 ◆約13年にわたる内戦状態に終止符 12月8日、内戦が続くシリアで攻勢を強めていた反体制派が首都ダマスカスを掌握。アサド政権が崩壊しました。 シリアでは2011年、中東民主化運動「アラブの春」が波及し、反政府デモが本格化。それをアサド政権が武力で弾圧して以来、約13年に渡り内戦状態が続いていました。以前はイランやロシアの軍事支援を受けるアサド政権側が優位に立っていましたが、イランはイスラエルと、ロシアはウクライナとの戦闘で両国は疲弊し弱体化。反体制派が北部・中部の要地を次々に制圧し、半世紀以上続いた強権体制は幕を閉じました。 そんな大きな過渡期にあるシリアの現状について、今回はシリア人ジャーナリストのエルカシュ・ナジーブさんにキャスターの堀潤が話を伺いました。 まずナジーブさんは開口一番「政権崩壊できました!」と喜びを露わに。そして、「(アサド政権が崩壊すると)誰も思っていなかった。みんなダマスカスとその(近郊の)地域だけアサド政権の元に残ると言っていて、『そしたら私は結局故郷には行けない』という話をしていた。でも、アサド政権が倒れたんですよ!」と興奮気味に語ります。 アサド政権下では多くの国民が国外へと流出。しかし、今回政権が倒れたことで「世界中のシリア人が戻ってくる。新しいシリアを作りますから……」とナジーブさんは涙ながらに語ります。 そして、最後にナジーブさんは「私たちは持続可能なエネルギー、先端技術、遺跡を大切にする国になりたい」と今後のビジョンを語り、「日本にいるシリアコミュニティ、日本、みんなで協力してやらなきゃいけないと思っています」と話していました。 ◆生まれ変わるシリアの未来は? ナジーブさんの“持続可能なエネルギー、先端技術、遺跡を大切にする国になりたい”という言葉について、堀は「アサド政権が体制を維持してきた背景には戦争と麻薬がある。非常にイリーガルなお金によって運営されていた。今後、多くの苦労があり、経済力のあるいろいろな国が影響力を及ぼすだろうが、シリアの方々は正当なビジネスで、汚れたお金ではなく再建していくということ」とその裏にある思いを推察します。 そして、シリアの今後について。アサド政権を打ち崩した反体制派にはさまざまな勢力があるなか、主導していた組織のひとつに「シリア解放機構」があります。これは前身となっているのが“アルカイダ”でアメリカはテロ組織に指定しています。 しかし、ダマスカス奪還前、米CNNが同組織の指導者ジャウラニ氏に独占インタビューを行った際、彼は多様な民族・宗教を認め、さまざまなマイノリティとともに国を作っていく、“穏健な統治” を目指すというメッセージを発信しています。 ナジーブさんによると、シリア解放機構はイスラム原理主義的な要素の強い組織で保守的な国に向かう可能性があるが、現段階ではマイノリティに開かれた対応を取るという期待もあるそうです。 「The HEADLINE」編集長の石田健さんは、シリアの行く末を案じつつ「シリアはここ10年というより、何世紀というレベルで問題があって、そこにアメリカやイギリスなどが介入したり、ロシアの影響力もある。そのなかでこのニュースを捉えなければいけないが、我々がシリアに関心を寄せるのはこういうときだけ。メディアも数字が取れないから(シリアのニュースを)扱っていない。国が滅ぶ、あるいは始まるくらい大きな話題をこうして触れることがなかなかできない」と憂慮。 さらに石田さんは、「例えば、石油や産業、いろいろな面で我々(日本)は中東と関係が深いので、この話題を今後も追っていきたいし、いかに我々が関係しているのかというところからニュースや情報を届けていかないといけないと改めて思った」と素直な思いを述べます。 microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、今回の件に関し「歴史が動いた瞬間」としつつも、シリアの先行きに関しては不安を感じているようで「(アサド政権崩壊の)発端はロシアやイランの弱体化がある一方、その背後には両国が弱体化して得をするプレイヤーが絶対に出てくる。結局、そうした政治的な思惑があるプレイヤーが入ってきて、介入力のあるプレイヤーによって国の運営が左右されてしまう。それはシリア国民のためになる政治とは思えないので、このタイミングで各国が話し合い、どういう介入の仕方、そして民意の吸い上げができるのかを考えサポートできるといいと思う」と話します。 この意見に、堀も「これは大事なポイント」と賛同。「(シリアでは)国際社会が2010年以降の内戦に関わってくれたのかという深い不信感がある。だからこそ、国際社会がシリアの人たちに対し信頼を取り戻す必要がある」と訴えていました。