「前日は、なかなか寝付けなくて」侍ジャパンの最年少右腕・高橋宏斗がアメリカ戦で得た意外な収穫とは?「44歳のヒルさんのピッチングに…」
44歳の左腕と投げ合い
そして迎えたアメリカ戦は、圧巻のパワーピッチを披露した。1回の三者連続を含む、毎回の8奪三振。ストレートで押し込み、スプリットで空振りを奪った。無失点でブルペン陣にバトンを渡したのだが、この試合で大会最大の収穫を得る。それは米国の先発、リッチ・ヒルだった。 年齢は高橋の倍の44歳。日本式でいえば、松坂世代の1学年上にあたる。2005年にメジャーデビューして以来、13球団を渡り歩いた典型的なジャーニーマンである。通算90勝のベテラン左腕の球速は、高橋のスプリットよりも遅い140km台前半だったが、侍ジャパンの打者は全くタイミングを合わせることができなかった。
「ヒルさんのピッチングは…」
同じ球種でもフォームにもボールにも強弱をつけ、まるで違う球種を投げ分けているかのように打者に強いスイングをさせない。同じ4回で高橋は2安打だったが、ヒルは辰己涼介に打たれたセンター前の1本のみ(5奪三振)。 もっとも、ヒルの奥深いピッチングを、高橋は直接見てはいない。味方の攻撃中にベンチ前でキャッチボールを行うNPBスタイルは、国際大会では認められておらず、攻撃中はベンチ奥にあるブルペンにこもりきりで、次の回への準備をしていたからだ。 「だからヒルさんのピッチングは、試合を振り返るための映像で見たんですよ。日本の打者が141kmに差し込まれ、カーブには泳がされ……。今の僕はストライクからボールになる球は持っていますけど、この次にやるべきことはゾーンの中でどれだけ動かすことができるか。ヒルさんのピッチングから学ぶことはすごく多かったです」
メジャーを目指す右腕が得たもの
直接話す機会はなかったが、ヒルが自分のことに言及した記事をインターネットで読んだ。スキーンズのように力で押すスタイルは、MLBのみならずNPBでも主流となっている。しかし、高速化にあらがうかのように、44歳のヒルは今もMLB球団からオファーが来る。 ただ投げるスローイングと、打者を抑えるテクニックを凝縮したピッチングとの違い。親子ほど年の差のあるベテラン投手との投げ合いは、心の奥底に将来のメジャー挑戦を温めているであろう高橋に、強烈な印象を植え付けた。 1次リーグのプエルトリコ戦、メキシコ戦と計10回3分の1を投げ、防御率0.00だったヒルは、大会終了後にベストナインに相当する「ALL-WORLD TEAM」の先発投手部門で選出された。優れた投手とは、速い球を投げる投手だけではない。高橋に衝撃を与えた44歳は、来シーズンもMLBで投げているはずだ。
(「草茂みベースボールの道白し」小西斗真 = 文)
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