アベノミクスがプロスポーツに与える光と影
一方で、円安の恩恵を受ける人々もいる。 卓球のワールドツアーファイナルの女子シングルで優勝した石川佳純(21歳、全農)は、賞金10万ドルを獲得して、「こんなにもらったことはありません。もし時間があれば、家族や友達と旅行に行きたいです」と大喜びだったが、現在のレートだと日本円にして約1185万円。もし1ドルが100円台ならば100万円は違ってくる。100万円あれば十分に友達との旅行は可能だろう。テニスの錦織圭の今季の獲得賞金は431万ドル。大会時期の為替によって左右するが、単純計算すれば、1ドル≒100円と1ドル≒118円では約8000万円も違う。 当然、輸出産業はプラスの影響を受ける。海外でプレーをしている日本人選手だ。ヤンキースの田中将大投手は、7年総額、1億5500万ドルという巨額契約を結んだ。メジャーは、12か月の分割、もしくは、月2回の24か月払いなどで支払うが、マー君の年俸を1年に換算すると1ドル≒100円では、22億1429万円が1ドル≒118円になると、26億1286万円となって約4億円も違ってくるのである。国内で税処理をすると、その分、税金がかかってくることになるが、日本人メジャーリーガーの一部は、海外に設立した会社で経理処理をするなど節税対策をしている選手もいて円安の影響はプラスに変わるようになっている。 プロ野球界は、間違いなく輸入、輸出の貿易格差が大きい世界。広島や横浜DeNaが今季の観客動員を増やしているが、これらは、企業努力の成果。横浜DeNAなどは、綿密な市場調査から来てもらいたいターゲット層を絞って、そこへのアプローチをあらゆる形で行っている成果が出ているだけであって、アベノミクスの影響で観客動員が増えたという分析を出している球団は、今のところない。 政府は、デフレを脱却して物価が上がれば、給料が増え、消費が増えるという見込みを謳っていたが、プロスポーツを見にくるお客さんは、その原理でチケット購入をするだろうか。逆に消費税増税で購買意欲は冷え込んでいないか。むしろ為替レートが球団経営へ与える大なり小なりの打撃がファンサービスや、他の部分への投資に影響を与えるネガティブな側面の方が懸念される。