好奇心をコントロールして劇的に生産性を高める方法
■好奇心を効果的に活用する 「昨夜の試合の結果はどうだったのだろう。少し調べてみよう」 「これはエネルギーの未来に関する興味深い記事のようだ。少しクリックしてみよう」 「あのバーベキューグリルは値下がりしたかな。少し確認してみよう。一瞬で済むから……」 集中できない時、この「少し」調べる、クリックする、確認する、といったことを「いまやるべきこと」だと思ってしまう。そして「やることリスト」にはない物事に意識が向かい、心のGPSは予定のルートを大幅に外れ、オンラインの荒野をさまようことになる。 好奇心の赴くままにしておくと、非生産的で注意散漫な状態を引き起こし、一日の終わりまでにたどり着きたい目的地からあなたを遠ざける。長時間PCの前にいても、重要ではない仕事をこなすだけで、大きなプロジェクトには手もつけず、仕事とは無関係の興味深い物事に大半の時間を費やすことになる。 だが、予定よりも仕事が遅れるにつれて、ストレスとプレッシャーが高まり、ついに締め切りを突きつけられて、無駄にした時間を取り戻すために残業せざるをえなくなる。好奇心の赴くままに行動した結果、あなたが最も輝き、最高の働きをするための能力は発揮されなくなる。 しかし、何か重要な物事についてクリエイティブに考えることを意識的に行う時、意図的に向けられた好奇心は仕事において素晴らしい力となり、あなたのイノベーションや有効性を劇的に高める可能性がある。
■好奇心を使ってより生産的になる方法 そこで、好奇心をうまく活用して、最大限の成果を上げる方法をいくつか紹介しよう。 ■有用なものを見極め、それ以外はすべて先送りにする 生産的な好奇心とは、実際に成し遂げたいことや、成し遂げる必要があることに向けられた好奇心だ。それは、見込み客を惹きつける新たな営業プレゼンのアプローチを考えたり、チーム間のコミュニケーションを改善してプロジェクトの遅れを縮小したり、何か成し遂げるために集中する時間を増やそうとメールの効果的な活用法を考えたりすることかもしれない。 もちろん、単純に興味深いことに学びがないわけではない。しかし、仕事で時間が不足しているなら、現在の目的の範囲内にあることに好奇心を持ち、その特定の課題に関してより深く学ぶことに対し、意図的に注意を向けるべきだろう。 現在の目的の範囲外で何か面白いことに遭遇したら、将来、時間がある時に探求することのリストに加えよう。ただ、新しいアイデアについて、いますぐ何かをしなければならないと思う必要はない。いまアジェンダにあることだけで十分だ。 ■問題解決に意図的に好奇心を向ける いきなり問題解決に取りかかる前に、問題の真の原因を見極めることに時間と思考を費やそう。この一時停止こそが、好奇心を意図的に活用できる場面だ。 たとえば、顧客追跡に問題があるとしよう。真っ先に思いついた解決法に飛びつき、新しい顧客関係管理ツールが必要だと思い込むのではなく、まずは一歩下がって好奇心を持とう。ソフトウェアを見て、必要な機能があるかどうか確認してほしい。そして、利用データを見て、ユーザーがシステムを十分活用しているか調べよう。ユーザーに直接話を聞き、システムの処理速度が遅いとか、アップデートが難しいとか、ユーザーのスマートフォンやタブレット型端末との互換性が低いといった問題がないかどうかを確認しよう。 こうした探究を行うと最初は時間がかかるが、原因の根幹に好奇心を持って臨めば、より効果的な解決策を見出せるとともに、適切に問題解決できるようになる。 ■仕事上の人間関係を改善する 『7つの習慣』の著者スティーブン・コヴィーは、「人を相手にする時は、急ぐと遅くなり、ゆっくり取り組むとスピーディに進む」と語っている。ペースを落として、周囲をよく見まわし、人の声に耳を傾けると、自分の生産的な好奇心を活用して、仕事上の人間関係を大きく改善できる。 同僚や従業員が仕事を終わらせるのに苦労していたり、仕事上の人間関係に緊張があったりすることに気づいたら、スピードを落として、何が起きているのかよく考えてみよう。その人は仕事を抱えすぎていて、サポートが必要なのか、あるいは仕事の優先順位をつけるのに助けが必要なのか。同僚はプロジェクトを段階的に分けることに苦労しているのか。そうだとすれば、ブレインストーミングで最善の道筋を決めるのが有益ではないか。家族の病気など、外的要因が問題になっている可能性はないか。 オープンで共感できるポイントを見つけることに時間をかけると、問題解決につながるインサイトを得られるかもしれない。あるいは、より深く掘り下げて、相手の経験について話を聞き、最善のサポート方法を見つける必要があるかもしれない。 ■ストレスに気づき、減らす 好奇心は、仕事上のストレスを軽減する上でも、驚くほど生産的なものになりうる。「私の仕事はストレスが多い」と言って、「それなら転職先を探せばよい」とか「自分には向いていないのだ」と決めつけるのは簡単だ。たしかに向いていない仕事があるのも事実だが、転職活動がすべての答えではないかもしれない。別の解決策をクリエイティブに考えれば、仕事でバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥るのを避けて、現在のポジションに留まることができる。 ストレスの原因を探る:通勤時間か、仕事仲間か、仕事の種類か、スケジュールか、仕事量か、給料か。 できることを探る:仕事の何らかの側面を調整すれば、ストレスを減らしたり、満足度を高めたりできるだろうか。自分が情熱を感じられるプロジェクトを引き受ければ、張り合いを感じられて、自分の価値観と一致する仕事をしていると思えるかもしれない。週に一度、ミーティングゼロの日を設けて、仕事に集中できる時間をつくればよいのかもしれない。仕事で一定の成果を上げたら、特別ボーナスをもらえるよう交渉すればよい場合もある。 赴くままの好奇心は、あなたを脱線させ、あなたがたどり着きたい場所にたどり着けないようにする可能性がある。だが、生産的な好奇心は、ペースを落として熟考を促すことにより、仕事上の問題を解決し、よりよい人間関係を築き、ストレスを減らす強力なツールになるだろう。 "Is Your Curiosity Helping or Hurting Your Work?" HBR.org, November 14, 2023.
エリザベス・グレース・サンダーズ