【映画館へ行こう!】旬の女優、河合優実の魅力がほとばしる映画『ナミビアの砂漠』は必見!
刹那的で暴力的で、自分のことが大嫌いで大好きなカナの生き方とは……
映画『ナミビアの砂漠』を観て思ったのは、「思春期の子供を持っている家庭は、きっと子供の思いや感情をくみ取れないだろうな」ということ。カナの言動を見ていると、本人ですら分かっていない“感情の爆発に火を付ける導火線”は、だれも理解できないし、カナ自身も他者に理解を求めていないので、全くどこにも行き着けません。 もちろん、家族であっても他人を100%理解するなんてことは不可能ですが、この映画の登場人物を見ていると、いわゆる閉塞感というのは、自分の目の前にある“壁”として年代を問わず必ず存在するものだというのが分かります。もちろんあなたにも、私にも。 この映画の主人公、カナは、そんな壁を感じながら、もがき、あらがい、ついには言葉や行動で暴れ出します。男性との関係性も、恋愛に求めるものも、恋愛で求められるものも理解できずに、ただ感情をむき出しにしたまま攻撃してしまう……。 そこで思うのが、「あぁ、自分の青春時代にも多かれ少なかれあったな」ということ。自分の居場所は侵されたくないけど、恋愛感情があるなら、相手の居場所には侵入したい。でも、共有出来る部分は意外と狭くて、そこは息苦しい……。立ち位置がないと、自分自身を追い込んでしまう恋愛はいつの時代も不幸な結果しか招きません。
「本当に描きたいこと」を圧倒的なパワーとエネルギーで描ききる!
2020年代の“今”を、一人の女性を通して鮮やかに描き出すのは、山中瑶子監督。日本大学芸術学部中退後、独学で制作した初監督作品『あみこ』がPFFアワード2017に入選。翌年、20歳で第68回ベルリン国際映画祭に史上最年少で招待され、同映画祭の長編映画監督の最年少記録を更新。 本格的長編第一作となるこの『ナミビアの砂漠』は第77回カンヌ国際映画祭 監督週間に出品され、女性監督として史上最年少となる国際映画批評家連盟賞を受賞しています。 1997年生まれの監督と、2000年生まれの女優のタッグから生まれた映画『ナミビアの砂漠』。プロデューサーが山中監督に伝えた、「二人で本当にやりたいことを自由に作ってくださいとだけ伝えました」という言葉から生まれた映像は、あらゆる世代の感情を揺れ動かします。
梶井 誠