知られざる遠洋漁業 日本の食を支えている外国人船員たち
南太平洋の島国、キリバス共和国。ミクロネシア人が住むこの島しょ国が、温暖化による海面上昇で水没の恐れのあることはしばしば報じられるが、日本の漁業が、そしてマグロやカツオなどの日本の食が彼らによって支えられていることは一般にはあまり知られていない。
「みんな仲間、楽しくやっている」
日本一の遠洋漁業の町、静岡県・焼津。港周辺で時折、ラフな服装の屈強な外国人の男達を見かけることがある。コンビニ駐車場で、そんな外国人男性に日本語で声をかけてみた。 「こんにちは」 会釈をして話しかけると、思いがけない穏やかな表情がかえってきた。 「日本語、話せますか?」 外国人男性は「ちょっと」と言うと屈託ない笑顔を見せた。メディアの取材として話しを聞きたいと英語を混じえて伝えると、「いいよ」とあっさり了承してくれた。
外国人男性は37歳のキリバス人。漁船員になって20年近くになるが、しばらく休んでキリバスで過ごしていたらしい。最近、再び日本船に乗り始めたという。焼津で数日過ごしまた漁に出る。妻と子供、両親の住むキリバスに帰るのは今年10月頃。 寂しくないか聞くと、「船には日本人もインドネシア人もいる。みんな仲間。楽しくやっている」と言う。話しながらスマートフォンの英語のゲームにこうじている。コンビニにはシャンプーとボディソープを買いにきたらしい。たどたどしいが、日本語を聞き取って話すことができる。ただ「日本語は難しい」とも言っていた。午後9時には船に戻らなければならないらしいので、握手をして別れた。
かつては中国、ベトナム、ミャンマー人も
漁業関係者の説明によると、カツオの一本釣り船には日本人10人に対して外国人20人程度、マグロ船には日本人5~6人に対して外国人18人程度、巻き網漁船には日本人14~15人に対して外国人が8人くらい乗り込んでいるという。巻き網だけ日本人が多いのは、巻き網は給料が高いからだという。外国人船員はキリバスかインドネシア人でほぼ占められている。「以前は中国やベトナム、ミャンマー人を船員に雇ったが、日本人船員と上手くいかなかったり、集団で逃げてしまったりして。船会社もいろいろ模索してインドネシアとキリバスに落ち着いた」のだという。