南海トラフに企業も備え-緊急対策本部設置、速度落として運転
(ブルームバーグ): 8日に発生した宮崎県日南市を震源地とする震度6弱の地震に伴い、気象庁が南海トラフ地震への注意を呼びかけたことを受け、インフラ企業などでは備えを進めている。
コスモエネルギーホールディングスは、グループ内で「危機対策本部」を立ち上げ、万が一の状況に備えて関連部署などとの連携を強める体制を取る。JERAでも「非常態勢」をとって連絡体制を強化。各事業所での食料や資材などの備蓄品の確認や燃料運搬船との緊急時のやり取りの手順について再確認するなどした。
JR東海によると、東海道新幹線の三島駅と三河安城駅間で速度を落として運転を行っている影響で遅れが発生しているほか、一部の特急を8日から1週間程度運休する。JR東日本も東海道線や伊東線などで当面の間速度を落として運行する。原子力規制委員会は、各地の原発に防災体制を確認するよう注意喚起した。
SUMCOは半導体の製造に欠かせないシリコンウエハーを生産する宮崎市内の工場の稼働を一時停止。広報担当によると、振動に対して自動停止する装置があるためで、再稼働に向けて確認作業を行っている。ロームも宮崎市内のパワー半導体工場の稼働を一時停止して安全確認作業を進めている。
円安傾向が続いたことで訪日外国客(インバウンド)が増加している中、観光需要への影響も懸念される。和歌山県白浜町の南紀白浜観光協会は10日に予定していた花火大会の中止を決めたほか、複数の海水浴場を9日からおおむね1週間程度閉鎖する。
8日にはANAホールディングス傘下の全日本空輸が伊丹-宮崎間の3便の運行を取りやめ、約300人に影響が出た。日本航空(JAL)も同様に6便を休止した。JALの広報担当者によると、名古屋、白浜、高知、徳島、宮崎の各空港への到着便については地震が起きて着陸できない場合にそのまま出発地に戻れるよう、往復分の燃料を搭載する対応を取っている。
内閣府によると、南海トラフ巨大地震で生じる住宅やオフィスのほか各種ライフラインや交通網などの被害は「基本ケース」で計100.5兆円、震源域が陸に近い「陸側ケース」では171.6兆円と予測されている。また、地震により製造業など幅広い分野で企業の生産やサービスの低下が起こるとされており、「陸側ケース」での影響額は36.2兆円になると予測されている。