トヨタ9月中間決算、日中で販売不振もハイブリッド車の伸びに期待
トヨタは1997年の初代「プリウス」の発売以降、多くの車種にHVモデルを設定してきた。22年に発売した最新の第5世代プリウスの場合、HVのハイブリッドシステムの原価は初代と比べ、6分の1に下がった。HVはガソリンエンジン車よりも単価が高いため、北米のスポーツ用多目的車(SUV)を例にとると、1台の利幅はHVがガソリン車より1割ほど高いという。
4~9月のHVの世界販売は、前年同期比21.1%増の約203万台と大幅な伸びを記録した。全体の販売台数に占めるHVの割合は、前年同期の32.4%から40.4%に上がっている。HVは今や収益を力強く支える存在だ。HVなどの電動車の販売増加が、トヨタの業績をどこまで押し上げるのかが焦点となる。
一方、4~9月はEVの世界販売も32.5%増の約8万台だった。全体に占める割合は小さいものの、中国や北米で販売を増やしている。
経営改革は
三つ目のポイントが「足場固め」や「余力づくり」と称して進めている経営や現場改革の進み具合だ。
佐藤恒治社長は5月の記者会見で、今年度は「グループの不正やトヨタの余力不足の課題に向き合い、足場を固めることが最重点事項だ」と述べ、25年3月期の営業利益が前期比2割減となる見通しを示した。ただ、6月にトヨタ本体でも不正が発覚した。
25年3月期は取引先の労務費、原材料費といった取引先のコスト上昇分の負担や、従業員の働く環境改善を進めるとして、「人への投資」が営業利益を3800億円押し下げる見通しを示している。
さらには、競争が激化しているEV向けの電池工場や、人工知能(AI)の研究開発といった成長分野への投資を増やすことも、減益の要因となる。
佐藤社長が今年5月の会見で使った「踊り場」という言葉は、約10年前の14年3月期決算で豊田章男社長(現会長)が語った「意志ある踊り場」との表現になぞらえたものだ。当時、東日本大震災やタイの洪水などによる影響を乗り越えたトヨタの業績は上向いていたが、豊田氏は一時的に利益を削ってでも、成長を実現するための投資に経営資源を振り向けることが大切だと訴えた。
佐藤氏も今年5月、「少しペースダウンしてでも、未来への投資を行いたい」と語っている。先行的な投資が利益をどの程度圧迫するのか、注目される。