「一番大切な持ち物は…」 高校生が作った“防災リュック” 震災を知らない子どもたちへ【東日本大震災13年の“あれから”】
■空腹や寒さ…生まれたばかりの妹と避難所で
「命を守りたい」という強い思いの源は、5つ下の妹・小学6年生の紀乃(きの)さんです。遊ぶときも勉強するときも2人はいつも一緒。紀乃さんは、震災のおよそ2か月前に生まれました。 家を津波で流され、生まれたばかりの紀乃さんと避難所で過ごした当時5歳の麻緒さん。その時の空腹や寒さ、不安な気持ちはいまでも覚えています。 小野寺麻緒さん 「本人(紀乃さん)も赤ちゃんだから覚えていない。覚えていないって言うのは体験していないとほぼ同じようなことだから、妹をその自分がつくった防災リュックで守りたいって思うのはあります」 妹の小野寺紀乃さん 「リュックを作るきっかけに、私が入っててびっくりしたし…。嬉しいなって思いました」
■「子どもに災害のことなんてわかるの?」
2023年1月、県内のおよそ80人の高校生が自分の研究を発表する学びの祭典に、麻緒さんは防災リュックを広めたいと参加しました。グループに分かれて、他校の生徒や保護者の前で1人ずつ発表します。妹・紀乃さんや姉・海衣(みい)さん、両親も駆けつけました。麻緒さんは緊張しながらも防災リュックを披露しました。 小野寺麻緒さん 「私がこの活動をしていて大変だったことは、『被災していない子どもに災害のことなんてわかるの?』『難しいんじゃない?』と前向きじゃない人たちがいたことです。自分自身も震災のことをどう伝えようかかなり悩みました」 麻緒さんには、それでも諦めずに伝えたかったことがありました。 小野寺麻緒さん 「私がこの場にいる皆さんにも、子どもたちにも伝えたいのは、“一番大切な持ち物は命”だということです」 「災害がきた時、誰かが自分を守ってくれるわけでもないし、ヒーローが助けに来てくれるわけではありません。自分の命を自分自身で守り、災害に備えていくことが大切だと思いました」 拍手で終わった発表。その後、話を聞いた他校の生徒から「頑張ってください!」などと、応援の声を次々にもらいました。麻緒さんにとっても、活動の励みになったようでした。被災した高校生が1人で始めた命を守る取り組みは、まだ始まったばかりです。