アストンマーティンF1”後退説”にチーム代表反論「準備は順調。ホンダもやってくるし、アラムコもいる……魅力的な立場なはずだ」
アストンマーティンのマイク・クラック代表は、昨年と比べて相対的なパフォーマンスを下げているように見える同チームについて、あくまで昨年が期待以上だっただけであり、チームを”勝てる”チームに整える計画は順調に進んでいると語った。 【動画】角田裕毅、2025年RB残留決定に喜びのコメント 2022年までは中団チームの一角に過ぎなかったアストンマーティン。しかし2023年シーズンには大躍進を果たし、表彰台の常連に。一躍トップチームの仲間入りを果たした。 しかし2024年は前年のような速さは見せられず、カナダGPまでの9戦で表彰台はゼロ。トップ4チームには差をつけられ、6番目のチームであるRBに脅かされるシーンも少なくない。 この状況を見ると、昨年と比べて大きく後退してしまっており、チームオーナーであるローレンス・ストロールが掲げる”チャンピオン争いをする”という目標からは遠ざかっているように見える。しかしそういうわけではないと、クラック代表は否定する。 「まだシーズンの1/3を終えたばかりの段階だ。そんな段階で、今シーズンのことを判断することはできないと思うよ」 マクラーレンやメルセデスに大きな差をつけられているのではないかと尋ねられたクラック代表は、そう語った。 「我々は自分たちのことを見つめ、抱えている問題を特定し、理解しようとする必要がある。そしてご存知のとおり、我々は他のチームの行動に影響を与えることはできない。我々にできることは自分たちのこと……レースごとに、できる限り自分たちのマシンを改良しなければいけないということだ」 「うまくいく時もあれば、うまくいかないこともある。そしてその理由を理解しなければいけない。そして、正しい方向に進んでいくんだ」 ローレンス・ストロールは、チームの名称をアストンマーティンとした時に、トップチームになるまでには3年から5年が必要だと語っていた。そして今年はその4年目に当たる。そういう意味では、表彰台を獲得できていない現状は、ストロールが立てた計画からは遅れているようにも見える。 これについて尋ねると、クラック代表は次のように語った。 「昨年の今頃、皆さんはたしか、『計画よりも遥かに前に進んでいますね』と言っていたはずだ。でも今、計画よりも遥かに遅れていると言われる」 「しかしチームとして進歩している部分があるか、それをしっかりと見なければいけないと思う」 「昨年は確かに、期待していたよりも良い結果を残せた。しかし私はいつも、ライバルが何をしているかに応じて、自分たちのポジションが上がったり下がったりすることもあると言い続けてきた」 「目標を失わないようにしなければいけない。そして結局のところ、シーズンごとではなく、レースごとにも判断している。イモラで最初に尋ねられたのは、『アップグレードが機能していないのでは?』ということだったが、我々はマシンのパフォーマンスについて、少し早急に判断し過ぎてしまっている。ドライバーについてもね」 「現在の状況を見ると、肯定的にも否定的にも見ることができる。それは、株式市場と同じようなモノかもしれない。インフラの面でも、開発という面でも、チームを成長させるための計画は整っているように見える」 「ホンダという素晴らしいパートナーがやってきてくれるし、アラムコという素晴らしいパートナーもいる。そういう意味では、否定的になる理由はないと思うよ」 5年というトップチームになるまでの目標とする期間は延びたのか? そう尋ねられたクラック代表は、次のように語る。 「こういう計画は慎重に立てなければいけないし、進歩は必ずしも直線的ではない。それに、目標に近付くに連れ、厳しい状況に直面するものだ」 「確かにその計画が立てられた当初、私はまだこのチームにはいなかった。でも、それは言い訳にはならない。我々はひとつのチームなんだからね」 「全体として、チームの成長には満足している。そして成長していく過程では、困難な時期も乗り越えなければいけない。そして昨年があまりにも良かったせいで、今年の期待値がすごく高くなっていた。でもそれは、乗り越えなければいけないことだ」 「F1ほど、時間が足りないビジネスはそれほど多くはない。つまり、期待をマネジメントすること、そして昨年の結果から生じる高い期待との間で、常に綱渡りをしなければいけないんだ」 「昨年が期待を大幅に上回ったことで、今はその高い基準で評価されている。でも、もう少し視野を広げる必要があると思う」 現在では技術面の重要人物の多くが、チーム移籍を検討していると言われる。その中には、数々のチャンピオンマシンを手がけてきた鬼才、エイドリアン・ニューウェイの名も含まれる。 今、そして2026年のアストンマーティンは、そういう人物たちにとっても魅力的なモノになっているはずだと、クラック代表は言う。 「基本的には、我々のポジションがいかに魅力的であるかということだと思う」 「ホンダと組むことが決まっているし、アラムコもいる。そして、2026年からレギュレーションは大きく変わる」 「我々は彼らにとって魅力的に映っていれば、それはとても素晴らしいことだ。なぜなら、誰もがこのプロジェクトが、大成功を収めることができるはずだと信じているからね」 「インフラも、ファクトリーも、順調に整いつつある。家を建てる時と同じように、順調に、遅れが生じないように進めていかなければいけない。しかし我々には、それを見守り、プレッシャーをかけ続ける優秀な人材がいる。だから、予定通りに全てが準備できるはずだと確信している」
田中 健一, Filip Cleeren