宇宙フェスにぎわう シンポジウムや体験、和歌山県串本
和歌山県串本町で14日に予定されている民間ロケット「カイロス2号機」の打ち上げまで2週間を切った。打ち上げの機運を高めようと町は11月30日と1日の2日間、同町西向の「宇宙ふれあいホールSora―Miru(ソラミル)」(旧古座分庁舎、来年4月開設)で「宇宙フェスティバル2024」を開いた。シンポジウムや体験などがあり、多くの参加者で活気づいた。 【開通予定 2年以上延期か 硬い岩やひび割れ対応、すさみ串本道路、和歌山の記事はこちら】 ■宇宙日本食の歴史学ぶ 1日午前、宇宙食について学ぶワークショップがあり25人が参加した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で「宇宙日本食」の開発に従事した中沢孝さんが講師を務め、宇宙食の歴史や求められる条件などについて解説した。 国際宇宙ステーション(ISS)では、宇宙飛行士が半年前後の長期滞在の中で宇宙食を食べている。中沢さんはアメリカやロシアの宇宙食の歴史について話し、宇宙専用の特別な食品だったものが、現代では地上の日常的な食品に近づいていることを説明した。 中沢さんは宇宙では常温で長期保存できることや「無重力」への対応が欠かせないとした上で、「おいしさ」も大事だと強調。さらに、ISSに滞在する日本人宇宙飛行士を支援しようと日本の食品メーカーなどが協力していることも紹介した。ウナギのかば焼きなど、現在は31社55品目がJAXAから認証されているという。 また、宇宙の環境と地震などの被災時の環境は類似点が多く、宇宙日本食を災害食に活用する動きが進んでいることを述べた。福井県の若狭高校の生徒が研究開発し、宇宙日本食に認証されたサバの缶詰を参加者が試食した。 この日の午後はロケットシンポジウムがあり、約50人が参加。公益財団法人日本宇宙少年団理事の上垣内茂樹さんによる基調講演では、ロケットの打ち上げが観光や地元の雇用、教育に効果があると解説した。 パネルディスカッションもあり、上垣内さんや串本古座高校の生徒、宇宙タレントの黒田有彩さん、串本町出身で元AKB48の山本瑠香さんが登壇。串本町の20年後について、意見を交わした。 ■アートやロケット作り 11月30日には、指先に付けたインクを飛ばして創作する「シブキアート」の体験や水ロケット工作などのワークショップがあった。 シブキアート体験には、親子連れら約20人が参加。アーティストのSHIBUKI(しぶき)さんが講師を務めた。 SHIBUKIさんが宇宙に見立てた黒い布に天の川を描いた後、参加者も挑戦。赤や青、緑や黄など色とりどりのインクを指先に取り、体全体を使って弾き飛ばした。 カイロス2号機の打ち上げ成功を願い、宇宙空間に勢いよく飛び出す機体の姿も描いた。 串本町潮岬の芝山旺佑ちゃん(5)は「ロケットを描くのが楽しかった」と笑顔を見せた。 水ロケットの工作には、約30人が参加。日本宇宙少年団職員の「宇宙兄さんズ」らが講師を務めた。 水ロケットは水と空気を入れて圧力を高め、水が噴射する力で飛ぶ仕組み。参加者はペットボトルなどの部品を組み合わせたり、羽根を付けたりして作業を進めた。 その後、実際に水ロケットを打ち上げ、空高く飛ぶ原理を確かめた。 町企画課の名田倍也課長は「2日間を通して参加者が生き生きとしていた。カイロス2号機の発射まで2週間を切ったが、今回のイベントで弾みをつけてみんなで万歳と喜びたい」と話した。
紀伊民報