富士通、自治体施策の効果を最大化する「Policy Twin」技術を開発
富士通株式会社は26日、自治体の施策(Policy)をデジタルツイン上で再現することで、施策による社会への影響をシミュレーションし、多様な視点で施策の効果を最大化できる技術「Policy Twin」を開発したと発表した。まずは、自治体の予防医療事業での効率的なサービス提供を支援する「Policy Twin」の技術を、富士通の先端技術を試せる「Fujitsu Research Portal」を通して12月6日に公開する。 富士通はこれまで、複雑な社会課題の解決を支援するために、AIを含むICTに最新の行動経済学の知見を取り入れた技術群となる、ソーシャルデジタルツインの研究開発を行っており、人々の行動をデジタルツイン上に高度に再現し、施策の効果や影響を事前に検証可能とするデジタルリハーサル技術の開発に取り組んできた。 デジタルリハーサル技術を拡張し、経済的な合理性に基づいて社会資源を適切に分配するための理論である実証経済学に基づいて、デジタルツイン上に再現した自治体の施策を事前検証し、効果の最大化や比較検討を可能とする技術となる、Policy Twinを開発した。 Policy Twinでは、施策をフロー形式に変換し、新たなフロー候補を生成、サービス提供のシミュレーションといった流れで効果的な施策を探索する。 まず、大規模言語モデル(LLM)などにより、文書として公開されている各自治体の施策情報を、提供サービス(保健指導や受診勧奨など)と、サービスを提供する対象者を絞り込むための条件分岐(血糖値や腎障害の条件など)からなる、機械可読なフロー形式に変換する。これにより、地理的な特性や人口構成を考慮し、類似する複数の自治体の施策のフローの違いを比較できる。 続いて、複数の自治体の中から実績のある施策のフローを参考にして、条件分岐や提供サービスの中から一部を組み合わせて再構成することで、新たなフロー候補をいくつか作成する。この際に、実証経済学の資源配分の検討プロセスを参考に、サービス利用の定員など限られたリソースの配分可能な範囲を制約条件として、フローの組み合わせを選定する。 作成したフロー候補の上で、フローの開始から人々がどの条件分岐を通って、結果としてどのような提供サービスに至るかを、人の行動選択を考慮した機械学習(独自の行動選択モデル)などにより、実績データに基づいてシミュレーションする。さらに、健康指標や医療費、リソースなどの自治体が目指す目標指標がどのように変化するかを算出する。 ある自治体における予防医療事業を対象にシミュレーションの正確さを検証したところ、国民健康保険のデータに基づいてPolicy Twinで算出した保健指導の件数は、実績値と誤差5%以内の範囲で一致することを確認したという。このように、複数のフロー候補でそれぞれ複数の指標をシミュレーションし、それらの指標が最大となるフロー候補を選択する。 富士通では、より効果の高い予防医療事業の施策の策定にPolicy Twinを活用することで、自治体が目指す住民の健康改善、医療費節減、疾患予防など複数の目標指標を同時に達成し、ウェルビーイング向上への寄与が期待できると説明。Policy Twinは、立案した施策の根拠も示せるため、多様なステークホルダー間の合意形成や社会への実装を容易にすることが期待され、さらに、複数の自治体で技術を活用することで、施策のベストプラクティスの導出や、自治体間での施策の相互参照、施策の標準化への応用も期待できるとしている。 富士通は今後、Policy Twinを活用した「健康医療EBPMサービス」の2025年度中の提供を目指す。さらに、「Uvance Wayfinders」のコンサルティングサービスにおいて技術を活用することで、自治体に限らずさまざまなステークホルダーが行っている事業をデジタル化し、人材不足へ対応したサービス再編、防災・減災、サプライチェーンのレジリエンスなど社会課題解決に貢献していくとしている。
クラウド Watch,三柳 英樹