東欧セルビアの新興ハッカー集団の台頭「ドコモの顧客個人情報を盗んだ」? 【サイバー空間の新たな犯罪者たち・前編】
ランサムウエアを使う最大の集団「ロックビット」は、1カ月に100以上の犯行声明を出すこともある。ランサムドは活動開始からわずか2カ月で約60の犯行声明を出し、ハッカー集団の中で頭角を現していた。 ランサムドの実態を探ろうと、所属するハッカーに取材してみようと思った。秘匿性の高い通信アプリ、テレグラムを通じてランサムドに「取材をしたい」と連絡すると、テレグラムからメッセージが返ってきた。ハッカーはセルビア人の「Moci Bosi」で、リーダー兼オーナーだと名乗った。「ランサムドのメンバーは日本人ハッカーを含む98人。日本人ハッカーの中には暗号資産(仮想通貨)の取引に使われるブロックチェーン(分散型台帳)技術の研究者として有名な人物がいる。組織の構成はリーダーの下に幹部がおり、『モデレーター(進行役)』や『オペレーター(操作員)』という肩書を持っている。幹部の下で実際にサイバー攻撃を実行する人物は『アフィリエイター(提携者)』と呼んでいる。サイトでは約60の企業のデータを盗んだと掲載しているが、実際は約120の企業や団体を攻撃して400万ドル(約6億円)以上を奪った」ということだった。
ソニーとドコモへの攻撃について尋ねると「日本人ハッカーの協力があった」と説明した。ソニーからはスマートフォン1台分の容量に相当する、240ギガバイトの設計データを盗んだという。「ソニーは金銭支払いの要求に応じなかったので、データを誰かに売ろうと考えている」とメッセージをよこした。 ドコモからは顧客情報のデータベースを盗み、約100万ドル(約1億5千万円)を要求したと説明した。ドコモから「30万ドルなら支払える」との回答があった。要求額を90万ドルに下げたが、ドコモは「40万ドルが限界だ」と回答し、裏取引の交渉は決裂したのだという。もちろん、ドコモは攻撃で被害を受けたこと自体を否定しており、ランサムドとの交渉はしていないとの立場だ。「Moci Bosi」は「ドコモの情報システムへの侵入方法を第三者に売った。10ビットコイン(約5千万円)以上で売れた」ともコメントした。 ドコモと新興ハッカー集団との裏取引の交渉はあったのだろうか。真相を明らかにするためさらに取材を続けた。(後編へ続く) 「近いうちに日本に行く」と軽口をたたいたセルビアのハッカー集団リーダーはサイバー空間の闇に消えた 【サイバー空間の新たな犯罪者たち・後編】