その乗り心地は「足をつっぱり、歯を噛み締めるなんて行為とは無縁」 モータージャーナリストの九島辰也がベントレー・コンチネンタルGT Sほか5台の注目輸入車に試乗!
外車はワクワクが止まらない!
モータージャーナリストの九島辰也さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! ベントレー・コンチネンタルGT S、BYDドルフィン、フェラーリ296GTS、プジョー408GTハイブリッド、ポルシェ・カイエンSクーペに乗った本音とは? 【写真24枚】モータージャーナリストの九島辰也さんがエンジン大試乗会で乗った5台の注目輸入車を写真で見る ◆ワクワクが止まらない 18歳で免許を取ってからこれまで40台ほど所有し、そのほとんどがガイシャでした。18歳の時のアウディ80、20歳の時のフォード・サンダーバード、30歳の時のメルセデス・ベンツ230E、40歳の時のポルシェ911カレラ、50歳の時のトライアンフ・スピットファイアと節目節目にその時心に刺さるクルマを手にして来ました。そしてその都度、ワクワクが止まらなかったのを覚えています。そのワクワクこそ、元気の源であったのは言わずもがな。異文化の中で生まれたクルマを全身で受け止めるのに大興奮です。今回の大試乗会でも魅力的なガイシャを走らせたわけですが、EPC会員の方々ともいろんなお話ができました。そこは垣根なしのクルマ談義。カイエンSクーペ、ベントレー・コンチネンタルGTの車内は盛り上がりました。そんな時間を共有させてくれるのがガイシャ。その魅力に取り憑かれ、60歳の今年も1台オーダー中です。 ◆ベントレー・コンチネンタルGT S「大人の魅力」 ベントレーに関しては今もなお誤解があるようだ。業界内で話している分には当然違和感はないが、それ以外では今もなおロールス・ロイスのバッジ違いとして受け止められており、正しい認識に至っていない。 ベントレーがレースのために生まれたスポーツカー・ブランドであることを話すと驚かれることは少なくないのだ。今回同乗してくれたEPC会員の方はもちろんそんなことは知っていて、ベントレーの走りにも期待してくれていた。乗り降りの際もとても丁寧にクルマと接してくれている。そして走り出すと思いのほか楽しんでくれたのがわかった。どうやら想像した以上に走りのパフォーマンスが高かったようだ。ポイントは直線の加速ではなく、高い速度域でコーナリングスピードをキープできること。それもなんの不安もなくキャビンを安定させたまま駆け抜ける。足をつっぱり、歯を噛み締めるなんて行為とは無縁だ。それがまさにベントレーの魅力であり、個人的に憧れているポイント。難しいことを難なくこなす大人のイメージ。このクルマを乗りこなすにはそんな人にならなくてはと思う。 ◆BYDドルフィン「BEV入門車!」 EV先進国の中国からやってきただけに、想像以上に完成度は高く、ドライバビリティもそれなりに高そうだ。日本はカー・カルチャーが熟成している分、ガソリン・エンジン至上主義者が多くEVに関してフィルターが入ってしまうが、このクルマはそんなことを感じさせない。コンパクトなボディは思いのほか軽快に走る。これだけで元気になりそうだね。そもそもBYDはバッテリー・メーカーだから、自慢のブレード・バッテリーなど競争力はあるし。某国産メーカーのエンジニアもその出来に驚き、ボクに試乗感想を求めてきたほどだ。う~ん、侮れない。でもって、次なる元気になるポイントはプライス。363万円からという、BEVにしてはかなりお手頃なタグが付く。“BEV=500万円スタート” みたいなイメージを覆す。さらにいえば、補助金により200万円台に突入するらしい。クルマ価格が高騰している昨今、テンションの上がる話だ。しかも国産車ではなくガイシャである。それにしてもこの価格設定は戦略的。BEVの入門車なんて見方もできちゃうかもしれない。 ◆フェラーリ296GTS「見ても乗ってもアガる!」 フェラーリのエンジン・スタート・ボタンに触れて元気にならない人はいないと思う。というか、元気が出過ぎてアドレナリン全開! という状態になる人も少なくないだろう。今回ステアリングを握った296GTSもそうで、ガソリン・エンジンにモーターが追加されてもそれは変わらない。おおよそかつてのような迫力のブリッピング音は聞けないが、モンスター・マシンに電源が入り、モニターが起動、いよいよスタートという気分になる。走りは言わずもがなのレーシングカー・テイスト。ステアリングを切るとドライバーを軸に鼻先の向きを変える姿勢がたまらない。目線の動きは独特だ。絵に描いたようにクルッと回転する。「これ、ほんとに公道走っていいの?」なんて気持ちになる挙動だ。動的性能だけではない。フェラーリはスタティックな状態でも見る者を魅了する。ワイド&ローの車体はまんまレーシングカー。ボンネットの低さもそうだし、地上最低高も尋常じゃない。それにリア・ウィンドウから覗けるパワーユニット。美術館に飾られるアート作品のようだ。こんなもんがガレージにあったら元気満点になる。 ◆プジョー408GTハイブリッド「雲の絨毯」 このクルマは色々な意味で新たな提案をしている。“フランス車=ホットハッチ”の図式はいまだに根強いが、クロスオーバーとてそれに負けない運動性能を持っている。プジョー408GTを走らせてみればわかるが、このホイールベースの長さでこれだけ動きがいいのには驚きだ。さらに言えば、このクルマは現在のプジョーブランドのフラッグシップだけあり、内外装とも高級感を感じる。個人的に好きなのは前後のLEDライトの光り方で、リアコンビネーションランプもかなり凝ったデザインでかっこいい。長く伸びたルーフラインもそう。遠くからでもエレガントな装いをアピールする。インテリアの未来チックなデザインも見ものだ。デジタルメーター・クラスターを有するi-Cockpitはオリジナリティいっぱい。ここもまたガイシャならではの世界観を打ち出す。国産車を見渡してもここまで振り切ったデザインは見たことない。そして最後に元気になる最大ポイントをお知らせしよう。それはこの乗り心地。“雲の絨毯”に例えられるそれは健在。これを味わったらもう他は乗れなくなってしまうかも。 ◆ポルシェ・カイエンSクーペ「スポーツカー談義」 SUVブームの中、各メーカーが自信作を投入している。グローバルでヒットすればかなりの収益になるからだ。ただ中にはコンセプトが定まっていないモデルも少なくない。快適性がウリなのか、積載性がウリなのか、スポーティな走りがウリなのか、はたまた四駆性能がウリなのか。その点カイエンSクーペはキャラがハッキリしている。あくまでもこいつはポルシェ。エキサイティングな走りが第一プライオリティであり、その後に快適性やラグジュアリーさが続く。澱みのないキャラは走り出すと気持ちがいいから惚れてしまう。そんな走りなので、EPC会員の方ともスポーツカー談義となる。SUVに乗りながらスポーツカーについて熱く話し合うのだからこのクルマが只者でないことは想像できるだろう。単なる背の高いSUVとは根本が違う。追い越し加速は当然のこと、ブレーキの持つストッピングパワーは超絶だ。ポルシェの伝統がこんなところに垣間見られる。その意味からもこいつは2シーター・ロードスターや2ドア・クーペと2台持ちするのが似合うだろう。誰もがそんな妄想に耽ってしまう一台である。 文=九島辰也 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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