「シビル・ウォー アメリカ最後の日」アレックス・ガーランド監督が語る「撮影の裏側」
A24に的を絞りながら、コストをある程度抑えつつもエッジの効いた部分は妥協せずに初稿を書き上げました。そしてA24に声をかけたら、予算も聞かずに即答で「YES」と言ってくれたんです。その後、プリプロダクション(撮影に向けた準備)に入ると予算がどんどんと増えていってしまったのですが、A24は質問も文句もなく「大丈夫」と100%サポートしてくれました。本作のテーマ性を考えると、それは非常に勇気がいることだったと思います。
――本作はロードムービー仕立てになっていて、アメリカ国内の現在の情勢や政治・地理について予備知識がなくてもスッと入り込めます。このアプローチは発明だと感じました。
ガーランド:ありがとうございます。私が意識していたことは「こういうテーマだからさまざまな怒りを買うに違いない、それを防ぎつつ、多くの人々が本質に対峙してくれるためにはどうしたらいいか」でした。そのために、裏口から入ってきてテーマを語るような手法を取っています。それが「ジャーナリストたちのロードムービー」でした。タイトルこそ「内戦」と直球ではありますが、物語の主軸をジャーナリストたちの旅にして、画面の隅っこで「こういうことを描いているのか」という本題を描けば、皆さん諍(いさか)いを起こすことなく観てくれて対話の種になると考えたのです。
――まんまとその狙いにハマってしまいました。ガーランド監督は、「エクス・マキナ」「アナイアレイション -全滅領域-」「MEN 同じ顔の男たち」と、ある種の異空間に新参者が入り込み、困惑するさまを描いてきたのではないかと思いますが、お好きな作劇なのでしょうか。
ガーランド:私が作る作品には、確かにそうした共通項があるかもしれませんね。ただ、英語で「between a rock and a hard place(八方ふさがり)」というように、にっちもさっちもいかない状況にキャラクターを置くのはドラマそのものの性質のようにも思います。極端な状況にキャラクターを放り込んで「さてどういった行動をとるでしょう」と提示し、観客は「自分ならどうするか」と自身を重ねながら物語を追っていく――この基本に則って、繰り返しやっているような気もします。