「いい加減にしてくれ、そんなに中学受験が大事か?」…子どもの受験にのめりこむ毒親の「静かなる狂気」
息子の幸せに対する執念
しかし、1年後の6年生の夏。我が子に対するくるみの態度は冷ややかになっていた。こうたの成績が下がり続けていたからだ。 「どうしてだろうね。こうちゃんも考えてみて?」 「点数はそんなに悪くなかったと思うんだけど……」 「みんな解ける簡単な問題だったんだよね?なのにどうして間違えたと思う?」 こうたはうまく答えられない。そんな息子の姿に深いため息をつくと、くるみは1週間ゲーム禁止を言い渡した。 一方で、夫婦仲は最悪な状態に陥っていた。 スマホでの情報収集に熱中するあまり、くるみは家事をほったらかしにしていたのだ。夫のけんじも、さすがに堪忍袋の緒が切れた。 「もういい加減にしてくれよ。そんな受験が大事か?家族も生活も犠牲にしてまでやることか?こうただって、今しかできないいろんなことを犠牲にしているじゃないか……。お前はこうたをどうしたいんだよ」 ――普通の幸せを手にしてほしい。 黙りこくまったままのくるみだったが、内に秘めた息子の幸せに対する執念は凄まじかった。 ――普通に誰かを好きになるとか、普通に結婚して子供を持つとか、職がちゃんとあって必要なときに必要なものが買えるとか、そんな普通の幸せ。そんなの普通に生きていたら手に入らない。自分からつかみにいかないとすぐにおいていかれる。こうちゃんなんて特に人よりがんばらないと。今は苦しくてもそれがあの子のためなら……。 作中のセリフはどれも生々しい。作者のしろやぎ秋吾さんは本作を描くにあたって一体どんな工夫を重ねたのだろうか。 「よりリアルな心理を描くため、子どもの中学受験を経験した方々に取材をさせてもらったり、体験談を読みこんだり、関連の本を読んだりしました。 自分の妻も協力者のひとりです。もしこういう状況に自分の子供が置かれたらどのように考えるかなど、ずいぶん相談に乗ってもらいました。もしかしたらこの時間が1番長かったかもしれません」 つづく記事〈「頑張らなかったあなたが悪いんだよ?」…中学受験で子どもを追い込む毒親が願った「自分勝手な幸せ」〉では、くるみの愛が暴走を始める。
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)
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