「チャージ、弱くなかったか?」“奇跡のバックホーム再現”だけでなく…「打率.071のショート」に関東一の49歳監督が信頼を寄せるワケ
今度は迷わない。関東一の中堅手・飛田優悟選手がチャージをかけた。 土壇場で試合を振り出しに戻したと確信した神村学園の選手たちはベンチを飛び出す。関東一のナインも失点を覚悟した。しかし、わずか数秒後。歓声と悲鳴が入れ替わる。クロスプレーに神経を集中させた球審が右手を上げてアウトをコールする。神村学園のベンチ前で選手たちは膝から崩れ落ち、関東一は歓喜の輪をつくった。 【現地写真】「奇跡のバックホームと完全一致…」関東一も28年前の松山商も神送球すぎる。18歳のヤンチャそうなオコエら名選手の球児時代などテレビには映らない“激闘甲子園”をナンバー撮影写真で一気に見る 9回2死一、二塁。二塁走者が生還すれば同点に追いつかれる場面だった。神村学園の代打・玉城功大選手の打球は、ゴロで二遊間を抜けた。関東一の飛田はダッシュして捕球すると、その勢いのまま本塁へノーバウンドで送球した。寸分の狂いなく捕手のミットに白球が収まり、決勝進出を決めるアウトを取った。 「打球が飛んでくる予測はしていました。甲子園はきれいに整備されている球場なので、イレギュラーはしないと判断して思い切って前に出ました。最初はジャッジが分からなかったので、アウトのコールを聞いてホッとしました」 高校野球ファンが記憶を重ねたのは「奇跡のバックホーム」だろう。 1996年夏の甲子園決勝、松山商は延長10回に1死満塁のピンチを招いた。守備固めに入った右翼の矢野勝嗣さんがフライを捕球してノーバウンドで本塁へ送球。タッチアップを狙った熊本工の三塁走者をアウトにした。 今でも語り継がれる伝説のプレーが生まれたのは、奇しくも8月21日。28年の時を経て、新たなバックホームが歴史に刻まれた。
1度目のバックホーム「少しチャージ、弱くなかったか?」
実は飛田が本塁に送球したのは、この試合2度目だった。4回2死二塁。神村学園の上川床勇希選手の放った打球は二遊間をゴロで抜けてセンターに転がった。前に出て捕球した飛田はバックホーム。わずかに間に合わず、先制点を許した。 ベンチに戻ると米沢貴光監督(49歳)から声をかけられた。 「少しチャージが弱くなかったか?」 アウトとセーフが間一髪で決まる場面で、やや安全なプレーを選択した飛田は「一歩目からもう少し勢いよく前に出ていれば走者をアウトにできたかもしれません」と反省。ただ、記録には残らない小さな失敗を――最終回の記憶に残る大きな成功へとつなげた。 関東一の強さは、この試合にも凝縮されている勝負所の守備にある。 今大会は初戦を除いて3試合連続で1点差勝利。好守で試合の流れをつくり、勝敗を分ける場面の守備でミスをしない。一方、神村学園は7回に2つの失策が出て2点を失っている。無失策だった関東一とは守備で明暗が分かれる形となった。
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