環境保全でブドウ栽培──400のワイナリー点在、南アフリカ・ワインランド
成田から香港経由でヨハネスブルグ、O.R.タンボ国際空港に着いた。国内線のケープタウン行きに乗り継ぐ合間、ふと空港内のトイレに入った。海外では珍しくピカピカに清掃されたトイレに少し驚いた。「ようこそ、私の美しいオフィスへ」とモップがけをしていた若い黒人男性が手を止め、海外からの旅行者に笑顔を振り撒いていた。 最近、日本からの観光客数を伸ばしている。長かったアパルトヘイト(人種隔離政策)の歴史を克服し、さらに貧困格差、治安の問題を克服すべく動き出した南アフリカ。政府も今、観光産業に力を注いでいる。 雄大な自然、そこに生きる野生動物を目当てに、“一生に一度は訪れたい”と言う旅行者も多い。多くの民族と言語、文化から成り立ってきたことから“虹の国”と呼ばれている南アフリカ共和国を旅した。
ケープタウンから車で東に向かった。40分くらい走ると斜面にぶどう畑が広がる風景が見えてきた。 ステレンボッシュ、フランシュフック、パールの町を中心とするエリアはワインランドと呼ばれ、南アフリカワインの一大生産地である。アフリカというと暑いイメージがするが、南アフリカのこの地方は比較的温暖な地中海性気候で、ぶどう栽培に適した土壌に恵まれた土地であったため発展していったそうだ。 この地方には約400ものワイナリーが点在しており、そのほとんどのエリアがユネスコの世界遺産に登録されているケープ植物区系保護地域に属している。そのため、自然環境の保全優先を考えてブドウ栽培が行われている。 大型のワイナリーでは見学やテイスティングだけでなく、レストランや宿泊施設、庭園、アートギャラリー、チャイルドスペースなどを併設し、観光地として家族で楽しめるようになっている。(つづく) (2017年11月撮影・文:倉谷清文) ※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<大自然と人 “虹の国”南アフリカへ>倉谷清文第9回」の一部を抜粋しました。