火星のオリンポス山に降りた霜 ESA探査機の観測で初めて発見される
こちらは火星の周回軌道から撮影された火星最大の火山「オリンポス山」(Olympus Mons、直径約610km・標高約21km)の姿。欧州宇宙機関(ESA)によると、山頂の巨大なカルデラの内部やその周辺を白く見せているのは水の霜です。“山頂が白く染まった山”と聞くと日本に住む私たちにとっては馴染みのある景色ですが、霜は降りないと考えられていた火星の赤道付近に位置するオリンポス山で水の霜が見つかったのは、ESAによれば今回が初めてです。 今日の宇宙画像 発見を報告したのはベルン大学の博士課程学生だったAdomas Valantinasさん(現在はブラウン大学の博士研究員)を筆頭とする研究チームです。2016年に火星へ到着したESA主導の火星探査ミッション「ExoMars(エクソマーズ)」の火星探査機「Trace Gas Orbtiter(TGO、トレース・ガス・オービター)」に搭載されているカラー・ステレオ表面撮像システム「CaSSIS」の高解像度画像を2018年から分析してきたValantinasさんは、火星の北半球が冬から春へと移り変わりつつあった2022年11月25日に撮影された朝のオリンポス山(現地時刻は7時11分)の画像に写る青みがかった堆積物を発見しました。 冒頭の画像はCaSSISの撮影から5日後となる2022年11月30日に、ESAの火星探査機「Mars Express(マーズ・エクスプレス)」に搭載されている高解像度ステレオカメラ「HRSC」を使って撮影された朝のオリンポス山(現地時刻は7時20分)です。CaSSIS、HRSC、それにTGOの分光器「NOMAD」の観測データを分析した研究チームは、オリンポス山をはじめアルシア山(Arsia Mons)、アスクレウス山(Ascraeus Mons)、ケラウニウス・トルス(Ceraunius Tholus)といったタルシス地域の火山の山頂で水の霜を発見するに至りました。今回の研究では最初に霜が見つかった画像から数えて、最終的に3万枚以上の画像が分析されたといいます。