若者に昇進の打診をすると嫌がられる!? 出世したくない若者が増えている理由とは
20代の部下に、昇進の打診をしたAさん。てっきり喜ぶだろうと思っていたら、「私が管理職に!? それなら、会社を辞めます」と言われて驚いたそうです。 実は、最近の20代会社員は、「出世したくない」と思っている人が増加傾向にあります。最近の若者の働き方や、仕事に対する考えを見てみましょう。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
社会人1年目・2年目の半数が「出世したいと思わない」
ソニー生命保険株式会社が、社会人1年目・2年目の男女1000名を対象とした「社会人1年目と2年目の意識調査 2024」(調査期間:2024年3月)によれば、約半数が「出世したいと思わない」と回答しています。 同時に目を引いたのが、社会人1年生よりも2年生のほうが「出世したいと思わない」と回答した比率が43.6%から52.8%へと10ポイント以上も上がっているということです。
リスクをとりたがらない国民性
日本人は、世界的な比較においてもリスクを避ける傾向が強く、これは国民性ともいわれています。世界価値観調査によると、日本人は「自分は冒険やリスクを求める」のカテゴリーに、自分が当てはまらないと思っている人の割合が世界的にもかなり高いとの結果が報告されています。 また、日本人は他人から非難される可能性があることを避けようとする傾向が高いとも指摘されています。こういった文化的な背景も若者が出世を好まない理由として根づいているのかもしれません。 しかし、国民性の問題ならば、「昔から日本人は出世に興味がない」ということになりますが、ワーカホリックともいわれていた昭和世代とは違うようです。この違いは、どこからきているのでしょうか。
バブル崩壊と失われた30年
実はこの2つが、今の若年層のキャリアに対する考え方に大きな影響を及ぼした要因ではないかと考えられます。 1980年代後半の円高に対応するために、日本銀行は金利を引き下げました。これにより、企業や個人は安いコストで資金を借りることができるようになり、不動産や株式市場への投資が急増しました。 政府の規制緩和もこのバブル経済を後押しし、金融機関が不動産を担保とした融資を拡大させ、不動産価格が急上昇し、「土地神話」と呼ばれるほど土地や不動産の価値が上がり続け、不動産さえ保有すれば確実な利益をもたらすという考え方が広まりました。 程なく、1990年代初頭にバブルが崩壊しました。きっかけは、1990年日本銀行が金融機関に対して土地関連の貸し出しを規制し、金融引き締め政策をとったことです。これ以降、不動産向け融資が一気に沈静化し、地価が大幅に下落しました。 「不動産や株式を保有していればもうかる」はずだった企業は、多額の債務を抱えることになり、生き残りのために設備投資や雇用を抑制しました。これが個人消費を直撃し、需要の悪化へとつながったのです。 「大企業に就職すれば将来安泰」だった昭和神話が崩れ、「勤めてもお金はたまらない」時代に転換したのが平成、その結果「お金がたまらないから結婚しない」「結婚しないから出生率も上がらない」「出生率が上がらないから労働人口が増えず、現役世代1人あたりの税・社会保険負担が急上昇し豊かになれない」という低成長・悲観スパイラルが始まりました。 そのような時代に生まれ育ってきた若者にとって、「仕事をしてもいいことはない」という自分にとってのキャリアに夢を描けなくなってきたと考えられます。