巨大なインドの動画サブスク市場、ネットフリックスは大苦戦
前述インド政府の2021年の統計で、インドでのアプリダウンロード数が289億ダウンロードに達し(ただし、インドでは96%がAndroidユーザー。9割近くがAndroid版のダウンロード)、別の統計(2022年)になるが、ダウンロード数別にはインスタグラム3億2700万ダウンロード、Facebook 1億9300万、他にはショッピングアプリ、電子マネー、迷惑電話をキャッチできるアプリ、ビデオゲームがダウンロード数トップ10入り。 売上別に見ると、ゲームアプリがトップ以下を占め、チャットアプリやGoogle One、そして第10位にストリーミング配信アプリHotstar(現在のDisney+ Hotstar)がランクインしている。 ただ、市場規模がこれだけ巨大な一方で、1人当たりのアプリ消費額は4.1ドル(約613円)と低いのが特徴だ(同年の日本は182.8ドル、約2万7300円)。
Netflixが直面している課題
インド市場にオンライン配信が出揃ったのは2018年だと言われている。通信会社間の競争が激化し、モバイル通信の値下げをしたことでより多くの人が容易に動画にアクセスできるようになったことを起爆剤に、国内での誕生だけでなく、国外の配信サービス会社がインドに進出し、30社以上が出そろったのが2018年ごろというのが理由だ。 また、世界のモバイル通信料を比較したデータによると、インドでの1GBあたりの料金は世界でも最安クラスの0.9ドル(約135円)、同報告書のデータで日本は約585円となっている。4Gの普及も進み、スマホに買い替える人が増え、手軽にいつでも配信コンテンツが楽しめるようになり、空前のブームを生みだした。 インド市場に進出するにあたり、海外大手は国際映画やオリジナルコンテンツ、ヒンディー語のコンテンツなどを用意し、その後はオリジナル作品(映画、短編シリーズのデジタル版)に注力した。 Netflixは、ローカルコンテンツの取得によって作品数を倍に増やしたほか、シリーズから映画までのローカライゼーション促進によって大量のメディアスペースを獲得した。同時に、インドで使用されているヒンディー語やタミール語、テルグ語、マラーティー語などの言語での大人気ヒット映画や、インディーズの人気作品の権利を取得。この買収に続いて、オリジナル映画やスタンドアップコメディ、インパクトのあるシリーズ作品を展開するなどインド市場での人気を確信していた。 また、2018年の時点でNetflixは日本でもロングラン上映され話題となった大ヒット映画『バーフバリ』を獲得、さらには映画の前編と位置付けられる2シーズンのドラマ『バーフバリ:ビフォーザビギニング』の制作を発表。Netflixは同作に150億ルピー(約270億円)を投資したとされ、ベストセラー作品の映像化に期待が高まり大きな話題となった。 しかしながら、撮影も終了し編集作業に入ったことが確認されたものの、昨年1月にはNetflix側が仕上がりに納得できず「作品がお蔵入りした」とエンタメ誌や地元新聞が報じその後の詳細については不明のままだ。 市場進出後しばらくは話題となり、勢いがあったかのように見えたNetflixが伸び悩んでいるのは、ローカルコンテンツ数が少なすぎるためと指摘されている。 ローカルコンテンツは同社がインドで提供しているタイトルの12%に過ぎず、ライバルのプライムビデオが現地の言語での作品を60%有していること、Disney+ Hotstarは元々、地元のスター・インディアの配信サービスをリブランドしたもので、ローカルコンテンツはもとよりハリウッド作品やアメリカのスタジオ製作ドラマが充実している。その上、最高で1,000万人が観戦視聴するクリケットのIPL(インディアン・プレミアリーグ)、国内サッカー、国内クリケットなど、スポーツコンテンツの充実が人気を独占している理由だと分析されている。