土壇場の同点弾でGS突破のイタリア代表、課題山積のなか決勝Tを勝ち上がるために必要なのは「スカマッカとキエーザの“覚醒”」【EURO2024コラム】
個々のプレーヤーに焦点を当てれば、最大の収穫はやはりカラフィオーリだ。守備だけでなく攻撃においても、ビルドアップにとどまらず敵陣に進出してチャンスメイクでも大きな貢献を果たし、しかも消極的なプレー選択に甘んじることなく常に勇気を持ってプレーするパーソナリティーを見せた。長短の正確なパスを繰り出せるCBアレッサンドロ・バストーニとのペアは当初、ともに左利きということもあって顔をしかめる向きも少なくなかったが、いまやイタリアを攻守両局面で支える土台として不可欠な存在になっている。 とはいえ、クロアチア戦では今後に向けた課題も浮き彫りになった。テクニックは高いがインテンシティーに欠けるクロアチアに対しては、ハイペースの展開で押し込んで後手に回らせる戦い方が効果的だったにもかかわらず、リスクを怖れて安易な横パスやバックパスで攻撃をスローダウンする場面が少なくなかった。それがなくなったのは、先制を許して攻めるしかなくなった最後の30分のことだ。 ルチャーノ・スパレッティ監督は試合直後の『Sky Italia』のインタビューで、「引き分けでもOKだという内心が、チームとしての振る舞いに表われていた。このチームにできることはもっとたくさんある。前半の我々はこのチームへの要求水準をクリアしていなかった」と語っている。 これはゲームマネジメント、そしてその背景にあるパーソナリティーや経験値の問題だ。ジョルジーニョ、ニコロ・バレッラ、ジョバンニ・ディ・ロレンツォ、ドンナルンマを除くと、クラブでも代表でも大舞台の経験値が高いとはいえず、プレッシャーの大きい国際大会の重要な試合で本来のパフォーマンスを発揮しきれない選手もいる。チームとして常に勇敢かつ積極的な振る舞いを保ち続けられるかが、指揮官とピッチ上でチームを引っ張るリーダーたちにとって今後の課題になるだろう。 グループステージの3試合を通して見れば、課題は守備よりもむしろ攻撃だ。アタッカー陣の中で最も個のクオリティーが高く、中核的な存在として決定機に絡むことが期待されているジャンルカ・スカマッカとフェデリコ・キエーザはともにノーゴール。 スカマッカには、前線で縦パスを収めてチームの押し上げを助ける基準点としての機能も期待されているが、ポストプレーでは相手DFとのフィジカルバトルを嫌ってワンタッチではたく場面が目立つ。また肝心のゴール前でも自らがフィニッシュ役を担うよりも、ヒールキックのような小細工に走るなど、表面的なプレーが多過ぎる印象は拭えない。 キエーザは単独で状況を打開する強引なプレーが持ち味ではあるが、それに精度が伴っておらず、本領発揮からは程遠い。しかし、決勝トーナメントでの強敵とのガチンコ対決を制するには、絶対的な個のクオリティーで違いを作り出せるタレントの活躍が不可欠。その意味で、イタリアがどれだけ高くまで到達できるかは、スカマッカとキエーザが「覚醒」するかどうかにかかっていると言えるかもしれない。 文●片野道郎
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