中国経済のトロイカ(消費、投資、輸出)、上半期の注目点
【東方新報】消費と投資と輸出は中国経済をけん引する「トロイカ(3頭立ての馬車)」だと言われる。今年上半期の中国経済では、この3分野で新しい成長分野が存在感を増しているという。 ■消費の新たな成長ポイント 国家統計局のスポークスパーソン劉愛華(Liu Aihua)氏は「デジタル消費と健康消費とグリーン消費とが新たな成長要素として、消費全体の持続的発展の大きな柱となりつつある」と紹介した。 統計局のデータによると、毎年恒例の「618ネットショッピング祭」「中古消費財下取り政策」などに牽引され、中国のアップグレード商品の販売が順調に伸びている。5月のスポーツ・レジャー用商品、通信機器、家電製品、AV機器などの小売売上額は、前年同月比で全て2桁の伸びをマークし、前月比も大幅に上昇した。 また「乗用車市場信息連席分会」の統計では、中国の新エネルギー車市場の上半期の小売り販売台数が411万1000台で、前年同期比33.1パーセントの大幅増となった。 国家発展・改革委員会ほか政府関係部門は連名で、飲食、文化・観光・スポーツ、ショッピング、大型商品消費、健康・養老・育児消費、コミュニティサービス消費など新しい消費成長分野に対する一連の政策イニチアチブを発表した。 同委員会は「一人当たりの国内総生産(GDP)が1万ドルを超すと、消費の高度化が大幅に加速する」という国際的な経験値を踏まえ、人口14億人以上の中国の1人当たりGDPが1万2000米ドル(約173万9640円)を超していること、ならびに中間所得層の拡大で、消費の高度化のペースがさらに加速すると見ている。 ■投資の新たなエンジン 大型設備更新政策の効果もあり、1月~5月の中国の設備購入投資は前年同期比17.5パーセント増加し、投資総額の成長の50パーセント以上に寄与し、投資をけん引する新たなエンジンとなった。 1~5月の中国の製造業投資は前年同期比9.6パーセント増で、投資総額の伸びを5.6ポイント上回った。中国民生銀行(CMBC)の温彬(Wen Bin)チーフエコノミストは、この伸びを経済の基礎的条件の改善と政策支援によるものだと考えている。理由の一つは、設備の更新や改造にけん引され、1~5月の設備購入投資の割合が前年同期を上回ったことだ。 また今年の下半期を展望すれば、前年同期比など比較基準の上昇やその他の制約要因があるとはいえ、中国の製造業投資は依然として経済発展の支柱となると予想している。 中国銀行研究院は、市場と政策の2つの要因で製造業への投資の成長は加速されると予想する。一つは「量と価格の共振効果」、すなわち生産の加速と工業製品価格の回復によってもたらされる効果によって、企業の収益性が引き続き強化され、投資意欲の拡大が期待できること。もう一つは、大規模な設備更新奨励政策が、専用設備、電気機械設備などの工業製品に対する需要の拡大を促すことだという。 ■輸出の新たな絶好調アイテム 昨年の「新たな三つの主力商品(新エネルギー車、リチウムイオン電池、太陽光発電)」に続き、今年は船舶が中国輸出の絶好調アイテムとなった。 中国税関総署の統計によると、1~5月で累計2363隻が輸出され、前年同期比25.0パーセント増加した。また輸出金額では約1209億8000万元(約2兆4232億円)となり、前年同期比増加率が100.1パーセントとなった。しかも造船各社の受注残は、現在2027年、28年まで埋まっている状況だという。 これに対し温彬チーフエコノミストは「中国の船舶輸出の好調は驚くほどのことではない。完全な産業チェーン、優れた製品競争力、多元的な市場拡大の努力が、輸出好調の基盤を築いたものだ」と述べている。 輸出船舶の種類では、中国は今や、ばら積み貨物船、オイルタンカー、自動車運搬船の世界最大の輸出国だ。受注残隻数の増加率も新記録となり、海運市場が回復するにともない、中国の船舶輸出は好調を続けることができると予想する。 しかし温氏は、中国の輸出入の内容的、構造的な向上に伴い、下半期の海外需要変化に対する弾力性の維持は可能だと思われるが、各国の貿易保護政策やその他の圧力の影響は無視できないと見ている。 中国は今後、積極的に輸出市場を拡大する一方で、内需安定のために力を尽くし、輸出市場の複雑さ、厳しさ、不確実性に対処する必要がある点を強調している。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。