中性子星とブラックホールの中間に位置する “天の川の謎の天体” を発見
■伴星の正体がどれであっても興味深い
PSR J0514-4002Eの伴星の重さは、まさに中性子星とブラックホールの質量ギャップに位置します。中性子星としては天文学史上最も重い値である一方、ブラックホールとしては天文学史上最も軽い値です。発見者が “天の川の謎の天体” と表現するのは無理もないことです。 現段階では、伴星の正体が中性子星なのかブラックホールなのか、あるいはその間に存在すると予測されている未知の異種星 (※3) なのかは分かっていません。もし中性子星や未知の異種星であった場合、天体物理学や核物理学に与える影響は大きなものとなります。一方でブラックホールであった場合、天文学史上初のミリ秒パルサーとブラックホールの連星の発見となるため、重力理論をテストする場として非常に重要な観測対象となります。 ※3…エキゾチック星とも。例えば中性子を構成する素粒子であるクォークが縮退して生成される「クォーク星」が提唱されていますが、異種星が実在するかどうかは今のところ確定しておらず、理論的な背景もほとんど明らかにされていません。 Barr氏らは、PSR J0514-4002Eの伴星はより軽い中性子星同士の合体で生じたと推定しています。正体を解明するのはこれからとなりますが、それがどのような天体であっても、確定するために行われる研究は中性子星とブラックホールに関連する天文学や物理学の謎の解明を大きく前進させることでしょう。 Source Ewan D. Barr, et al. “A pulsar in a binary with a compact object in the mass gap between neutron stars and black holes”. (Science) “Lightest black hole or heaviest neutron star? Manchester astronomers uncover a mysterious object in Milky Way”. (University of Manchester)
彩恵りり