中性子星とブラックホールの中間に位置する “天の川の謎の天体” を発見
■「PSR J0514-4002E」が従える “天の川の謎の物体” を発見
ところで、中性子星は高速で自転しており、狭い領域から強力な電波を放出しています。遠く離れた地球から中性子星を見ると、電波の放射領域が地球の方向を向いた瞬間だけ周期的に電波が観測されるため、電波の観測データはパルスと呼ばれます。この性質を持つ中性子星は「パルサー」と呼ばれていて、中性子星とほぼ同義語のように扱われます。その中でも、パルスの周期が1秒未満であるようなものは「ミリ秒パルサー」と呼ばれます。 Barr氏らの研究チームは、南アフリカ電波天文台の電波望遠鏡群「MeerKAT」を使用し、ミリ秒パルサー「PSR J0514-4002E」の詳細な観測を行いました。PSR J0514-4002Eは地球からみて「はと座」の方向に約4万光年離れた天の川銀河内の球状星団「NGC 1851」に存在し、同星団に存在する13個のパルサーの1つとして2022年に発見されたばかりです。PSR J0514-4002Eは1秒間に約170回自転していると考えられています。 ミリ秒パルサーの電波放射の周期は、原子時計に匹敵するほど正確です。もしこの周期に乱れがある場合、乱れを引き起こす重力源である伴星の存在が示唆されます。もし伴星がある場合、電波の波長が変化する度合いから伴星の質量を決定することもできます。Barr氏らはPSR J0514-4002Eの観測データを分析し、未知の伴星があるかどうかを調査しました。 その結果、PSR J0514-4002Eには未知の伴星があり、PSR J0514-4002Eと伴星を足し合わせた合計の質量が太陽の3.887±0.004倍であると計算されました。そして複数の波長を詳細に分析することで、より詳細な伴星の特性が明らかにされました。それによれば、伴星はPSR J0514-4002Eから約800万km離れた距離を7日かけて公転しており、中性子星やブラックホールのようなコンパクト星であるようです。最も興味深いのは、質量が太陽の2.09~2.71倍であるという点です。