石原さとみの最高傑作は? 「役」と同化する演技の秘密を徹底解説。ガチファンが「全盛期は今!」と断言する理由とは?
ドラマ『アンナチュラル』をはじめとする様々な作品に出演し、卓越した演技で視聴者に強い印象を与える石原さとみ。2024年に公開された映画『ミッシング』では、徹底した役作りが話題となった。今回は、石原さとみが演じるキャラクターは、なぜ観る人の記憶に残るのか、代表作を振り返りながら、その魅力を徹底解説する。(文・かんそう)
石原さとみの出世作『Ns’あおい』
誰かに「石原さとみの全盛期は?」と問われた時、石原さとみファンの私は「今である」と自信を持って言い切ることができる。そして、これまでの石原さとみの歴史があるからこそ。彼女の出演作をいくつか振り返りながら、その魅力を紐解きたい。 まず石原さとみ史における最初の出世作と言えば、2006年に放送されたドラマ『Ns’あおい』(フジテレビ系)だろう。問題だらけの内科病棟に配属される新人ナースの奮闘を描いたドラマで、患者の命を救うためなら看護師として制限されている医療行為にも手を出す美空あおいを演じた。 そんなあおいの、1点の曇りもない真っ直ぐなキャラクターと、当時の石原さとみが持つ透き通った透明感がバチッと噛み合った最高の作品だった。この石原さとみを見た瞬間から、私は石原さとみの虜になってしまった。 それから7年後、2012年に小栗旬とダブル主演を務めたドラマ『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)で再び石原さとみに心臓を打ち抜かれることになる。小栗旬演じるワンマンIT社長・日向徹とぶつかり合いながらも徐々に惹かれ合う就活生・夏井真琴を演じた。
石原さとみの吸収力とは
『リッチマン、プアウーマン』からわずか2年後、2014年。あの伝説のドラマが放映される。いまだに石原さとみファンの脳髄に刻み込まれている『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)だ。 松本潤演じる主人公・小動爽太に対し、思わせぶりな態度で惑わしながらも本心は決して見せることがない、キュートかつミステリアスな女性・高橋紗絵子を演じ、全視聴者を沼のドン底に落とした。 当時のインタビューにて、紗絵子というキャラクターについて聞かれたインタビューで石原さとみは「小悪魔系と言われて、まるで計算しているかのように思われるかもしれないけれど、マイペースで、自分に正直なんだと思います」と語っていた。 ただ、「あざとい」だけではない。脳がクラクラするほどの官能的なシーンの裏で描かれる、紗絵子の「陰」の部分。そのギャップを理解し、完璧に演じているからこそ、視聴者は甘いシーンはより甘く、苦いシーンはより苦く感じることができるのだ。 石原さとみはキャラクターの「吸収力」「理解力」が尋常ではない。この作品を境に石原さとみの魅力が一段も二段も増していく。 それからわずか半年後に松下奈緒とダブル主演を務めたドラマ『ディア・シスター』(フジテレビ系、2014)では男にだらしなく、一度の過ちで妊娠してしまう女性・深沢美咲を演じた。 『失恋ショコラティエ』の紗絵子が持つ「小悪魔」の部分をさらに増幅させ、その「あざとさ」を自覚的に操ることができる、まさに「リーサル・ウェポン」と言わんばかりのかわいさに私の心はグチャグチャされた。 しかし、その裏では大きな問題を抱えており、それが明るみに出る後半では石原さとみの演技の幅に、最後は涙腺をグチャグチャにされてしまった。