2030年までに日本のガソリンが変わる: 一度失敗した「E10ガソリン」導入が復活する意外な理由とは
記事のポイント①「E10ガソリン」の導入により、2030年までに日本のガソリンが変わる②「E10」はバイオエタノールを10%含むガソリンのことで、脱炭素に貢献する③導入の目的や効果、さらになぜ日本で導入が遅れたのか解説する
「E10ガソリン」の導入によって、2030年までに日本のガソリンが変わる見込みだ。「E10」とは、バイオエタノールを10%含むガソリンのことで、20%なら「E20」だ。バイオエタノールの利用は、農業振興や気候変動対策にも効果的とされる。記事では、「E10ガソリン」導入の目的や効果、さらになぜ日本で導入が遅れたのか解説する。(オルタナ客員論説委員・財部明郎) 2024年11月、資源エネルギー庁は2030年度までにE10ガソリンを導入する方針を固めた。あわせて2040年度からE20ガソリンの供給を開始する。※ E10、E20とはバイオエタノールを10%および20%含むガソリンのことだ。つまり、われわれが普段何気なく使っているガソリンがE10あるいはE20というガソリンに代わってしまうということだ。 日本では2012年に品質確保法が改正され、E10ガソリンを販売できる環境を整えたが広がらなかった。 この記事ではE10ガソリン導入の目的や効果、そしてどうして日本ではE10の導入が遅れたのかについて解説したい。 ※総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会脱炭素燃料政策小委員会(第1 7回) なお、バイオエタノールというガソリンとは違った成分をガソリンに添加しても自動車側には何か問題は発生しないのだろうか。その心配ももっともなのだが、その件については、次回の記事で解説したいと思う。 ■E10導入の目的とは バイオエタノールを混合したガソリンは「E+混合率」で示される。例えばバイオエタノールを10%含むものはE10、20%ならE20、100%ならE100といった具合だ。 日本ではあまりなじみのないE10ガソリンだが、世界的にはガソリンにバイオエタノールを添加することは当たり前に行われている。多くの国々ではE10だが、ブラジルではE27、インドは2025年からE20の導入が始まる予定である。さらに、米国ではE85、ブラジルではE100も販売されている。もう、海外ではガソリンにバイオエタノールを添加して使うことは普通に行われていることなのだ。 バイオエタノールを自動車用燃料として使う目的はいろいろある。最も早くバイオエタノールガソリンを採用したブラジルは、1970年代に発生した石油ショック時の原油価格上昇対策としてバイオエタノールを導入した。当時まだ貧しい国であったブラジルは、原油を購入する外貨を節約するために国内産のエネルギー源であるバイオエタノールを導入した。 また、バイオエタノールはトウモロコシや小麦のような農作物から生産されるため、欧米では余剰農作物対策という農業振興の目的もあった。さらに、米国は大気汚染対策としてバイオエタノールのような含酸素化合物の使用を義務付けたこともあるし、オクタン価向上剤としての役割も期待されている。 そして、近年注目されているのが気候変動対策だ。バイオエタノールはカーボンニュートラルであるため、燃やしても地球温暖化の原因となる空気中のCO2濃度を増加させない。日本がE10を導入する主な目的がこれだ。 続きは、 ■なぜ、日本で「E10」導入が遅れたのか ■「E10」は本当に気候変動対策になるのか ■ガソリンより6~7割のCO2排出量減に ■エネルギー安全保障にも利点 (続きは関連記事リンクからオルタナオンラインでお読みください)