「唯一無二の量産型」という矛盾を内包する若者 リスクを負わず自分を差別化したい若者の生存戦略
■「いい子症候群の若者」と「消極的な若者」の違い 次の点は「いい子症候群」の大きな特徴なので、改めて強調しておきたい。 昔から消極的で主体性のない若者というのは存在した。彼らと「いい子症候群」とは何が違うのか。 それはキャラのわかりやすさだ。 かつての消極的な若者は「行動特性(その1)」のような振る舞いはあまりしなかった。一見しておとなしく、コミュ力が乏しいだろうことがすぐにわかった。 しかし今の「いい子症候群」は違う。一見、若者らしい前向きさがある。協調性があり、(表面的な)意欲も見せる。年配者はこれに騙される。そしてこう言う。
「今年の新人は優秀だ」 それではなぜ、今の若者はそんなわかりにくい行動を取るのか。その内面にはどんな心理が隠されているのか。それを端的に表すと次のようになる。 「いい子症候群の若者たち」の心理特性 ・目立ちたくない、100人のうちの1人でいたい ・変なことを言って浮いたらどうしようといつも考える ・人前でほめられることが「圧」 ・横並びでいたい、差をつけないでほしい ・自分で決めたくない(皆で決めたい) ・自分に対する人の気持ちや感情が怖い
・自分の能力に自信がない 例えば、大学の講義で「何か質問はありますか?」と問いかけても、今の大学生からまず返答はない。自分だけが反応すると目立ってしまうからだ。 もしあなたが講義中に、一人の学生をほめようものなら、後で「皆の前でほめないで下さい」と言われることすらある。彼らは基本的に自己肯定感が低く、自分に自信がないため、人前でほめられることには「圧」を感じる。 集団の中でほめられると、自分に対する他者からの評価が上がり、期待されたり何かを任されたりするのではないかと思ってしまう。自己肯定感が低い若者にとって、これは恐怖でしかない。
■「いい子症候群化」は社会現象 この「人前でほめられる」という行為に対する若者の評価を、僕の友人でもある長田麻衣さんたちが実際にアンケートで集計してくれた。 結果は下の図表8-1の通り。サンプル集団は、首都圏在住の18歳から26歳の社会人男女411人で、約6割の若者が「大勢の前では褒められたくない」と回答している。 首都圏限定というところにサンプルバイアスが生じているが、逆に言えば、直感的にいい子症候群気質が低そうな首都圏の若者でさえ、人前でほめられたいと思う若者は4割弱しかいないということがわかる。