超富裕層が物色する「オルタナティブ資産」、トークン化で50兆円超の経済効果──日本でも急増するオルタナ投資
オルタナティブに投下される世界の個人資産はわずか5%
ベインは2022年、100万ドル~500万ドルの投資可能な資産を持つ富裕層と、500万ドル~3000万ドルの投資資産を有する高富裕層、3000万ドル以上を保有する超富裕層の418人の個人投資家を対象に調査を行った。 そのうち、53%の回答者が今後3年で、オルタナティブ投資を増やす計画があると回答した。資産ポートフォリオの多様化を目的とする投資家が最も多く(60%)、続いて「より高い利回りを追求する」が25%だった。 世界の総資産約290兆ドルのうち、個人が保有している資産は150兆ドルだが、オルタナティブ資産に投下されている個人資産はわずか5%に過ぎないと、JPモルガンとベインの共同レポートは述べる。 これを背景に、ブラックストーン(Blackstone)やKKR、カーライル(Carlyle)、アポロ(Apollo)など、オルタナティブ資産を運用する大手米企業は、個人投資家にフォーカスしたサービス提供の検討を本格化している。
オルタナティブ資産業界にトークン化技術を実装する方法
それでは、ブロックチェーンを活用したトークン化技術はいかに、オルタナティブ資産の運用業界で実装できるのか? 現在、複数の参加者で構成されるオルタナティブ資産の資産運用業界は、参加者間の分断化が顕著で、標準化されていないプロセスが用いられている。トークン化の核心は、シームレスで自動化された注文処理、決済、所有権の追跡、データ管理を可能にする共有プラットフォームとワークフローの構築を可能にすることである(JPモルガンのオニキスとベインの共同報告書)。 トークン化とは、ブロックチェーン上で、スマート・コントラクトとして知られるプログラム可能なコードとして、資産の所有権を表現することだ。スマート・コントラクトの特徴は、資産の所有記録(各投資家がどれだけ所有しているか)と、その記録の更新に関するプログラム可能で、自動化されたルール(例えば、資産の売買方法とタイミングを定義するコンピュータ・ロジック)の両方が含まれる。 オルタナティブ資産の文脈では、トークン化される資産は、オルタナティブ・ファンドに出資する出資者(リミテッド・パートナーシップ=LP)の持分となる。トークン化の実際のプロセスには、埋め込まれた情報を使ってスマートコントラクトを作成できる特殊なソフトウェアが必要となる。 このファンドトークンは、従来の名義書換の代わりに利用できる代替記録システムとして機能する。同じブロックチェーン上で、預託トークン(デポジットトークン)などの他の種類のトークンと組み合わせれば、自動化された即時決済を可能にすることができ、これまでサイロ化され、コストのかかるデータ照合に伴う長時間の多者間プロセスを大幅に改善することできる。 オルタナティブ資産の運用業界で、すべての参加者がプログラム可能なオンチェーン記録データにアクセスできるようになれば、自動化がさらに進み、運用上の摩擦が少なくなる。エンド・ツー・エンドでシームレスに管理できるシステムを、構築することができるようになる。 2023年、「RWAのトークン化」はバズワードとなった。リアル・ワールド・アセット(現実資産=RWA)をブロックチェーン上でトークン化すれば、従来の金融システムを大規模にアップグレードでき、個人がアクセスすることが難しいと言われてきた資産クラス市場にも、アクセス可能となる。 このRWAトークンの分野では、JPモルガンやシティグループ、シンガポール金融庁(MAS)などが試験プロジェクトを走らせてきた。日本では、野村ホールディングスや大和ホールディングス、三菱UFJ信託銀行、SBIホールディングスなどの金融大手が、単一不動産などの資産をトークン化し、新たな個人向けのデジタル金融商品を開発している。 |文:佐藤 茂|画像:Shutterstock
CoinDesk Japan 編集部