超富裕層が物色する「オルタナティブ資産」、トークン化で50兆円超の経済効果──日本でも急増するオルタナ投資
株式や債券などの伝統的な資産クラスに対して、不動産や未上場株式、プライベートクレジットなどはオルタナティブ(代替)資産と呼ばれる。リセッション(景気後退)に対する懸念が残るなか、高い利回りを求めてオルタナティブ市場に参入する投資家が増加している。 このオルタナティブ資産を扱う業界が、ブロックチェーンをベースにしたトークン化を進めた場合、4000億ドル(約58兆円)相当の新たな収益が生まれる可能性がある。米銀最大手のJPモルガン・チェースの子会社で、ブロックチェーン関連のプロジェクトを進めるオニキス(Onyx)が、米大手コンサルティング会社のベイン(Bain & Co)と共同で報告書をまとめた。 これまで機関投資家を対象にしてきたオルタナティブの資産運用業界は近年、個人の富裕投資家を顧客基盤に組み入れる動きを強めてきた。しかし、オルタナティブ資産を扱う運用業務は、特定の機関投資家のニーズに合わせ、手作業で行われる部分が多く、個人投資家に提供するにはオートメーション化を図る必要がある。 そこで注目されているのが「トークナイゼーション(ブロックチェーン上で金融資産や金融業務の一部をトークン化すること)」で、従来の手作業で行われてきたテーラーメイド型の業務を簡素化、自動化することが可能になる。その結果、機関投資家だけでなく、多くの富裕層に属する個人投資家に対しても、オルタナティブ資産の運用サービスを提供できるようになると、同報告書『トークン化でオルタナティブ投資を個人に提供し、4000億ドルの収益機会を創出する方法(仮訳)』は説明する。
日本でも高い利回り求めてプライベートクレジット投資が増加
日本でも高い利回りを求めてオルタナティブ資産を物色する投資家の数は増えている。なかでも、プライベートクレジットに対する投資需要は強い。 プライベートクレジットは、銀行が企業に貸し出す従来の融資とは異なり、銀行以外の投資ファンドなどが特定の企業(借り手)に対して、条件などを交渉して直接融資するもので、その債権は公開市場で取引されていない。 モルガン・スタンレーのレポートによると、プライベートクレジット市場は拡大傾向にあり、市場規模は2027年までに2.3兆ドルに増加すると予想される。2023年の市場規模は約1.4兆ドル。 マイナス金利が続く日本では昨年、プライベートクレジットに投資する国内投資家の数が過去最高を記録したと、ブルームバーグが報じている。大手生命保険会社などが今後、プライベートクレジットを含むオルタナティブ資産への投資を増やす計画だという。