ブランドセーフティ の「メリット」と「デメリット」再考:メリット編
記事のポイント フェミニズムにフォーカスしたメディア、イゼベルの閉鎖は広告主のブランドセーフティへの懸念が原因とされ、パブリッシャーの苦境を浮き彫りにした。 ブランドセーフティは消費者に与えるブランドイメージを保護するが、ニュースコンテンツが広告に与える「悪影響」は証明されていない。 広告主はニュースサイトを忌避する傾向にあるが、ニュースはマーケティングにとって重要なチャネルであり、広告主はそのチャンスを見過ごしている可能性がある。 メディア企業によるレイオフが再び始まり、広告のブランドセーフティをめぐる議論が再燃している。 どこか既視感のあるこの出来事に、メディア企業幹部は心穏やかではいられないのではないか。イゼベル(Jezebel)の関係者であればなおさらだろう。フェミニズムなど女性に焦点をあてたニュースや解説で知られるイゼベルは、11月第2週に閉鎖された。 404メディア(404 Media)の記事によれば、暫定編集長だったローレン・トゥーシニャン氏は、イゼベルのサイト閉鎖とスタッフ一時解雇という決定について、「ブランドセーフティ」が主な要因だと親会社のG/Oメディアから告げられたと述べた。イゼベル配信のコンテンツに隣接する広告枠への出稿に対する広告主の懸念が背景にあったという。
広告出稿可否の判断基準なのか
メディア業界では昔からおなじみの現象だが、パブリッシャーは広告主の撤退や予算削減の影響に悩まされてきた。たいていの場合、広告主が投資を控える理由ははっきりせず、よく挙げられる「市場環境の悪化」という理由も、パブリッシャー各社の苦境をみると、いかようにも解釈できる。そんななか、トゥーシニャン氏は、ニュース中心のパブリッシャーにおける広告事業運営の厳しい現実について、独自の鋭い見識を示している。 「現時点では、どのパブリッシャーも行きづまりを感じているはずだ」と、デンマークのニュースサイト大手、エクストラ・ブラデット(Ekstra Bladet)の広告販売/テクノロジー部門ディレクター、トマス・ルー・ライゼン氏はいう。「ブランドセーフティを広告出稿可否の主な判断基準にされたら、パブリッシャーは軒並み打撃を受けるだろう」。 しかし、誰もがそう感じているわけではなさそうだ。もしパブリッシャー全社が同様の苦境に陥っていたら、広告主が歩み寄ってニュースパブリッシャーを支えるべきか否かの議論はとっくの昔に決着していただろう。 広告業界で長年論じられてきたブランドセーフティについて、ここであらためて争点を整理してみよう。