文明史を覆すかもしれないトルコの謎の史跡に行ってみた!
山頂では強風が吹いていました。ネムルート山の標高は2135メートル、周辺の山の中では一番高く、当時の人々はその頂こそ王が眠るに相応しい地だと感じたのでしょうか。遺跡は古代コンマゲネ王国の王様であったアンティオコス1世(紀元前69~31)を祀ったものとされていて、山の頂の部分は人工的に小石を積み上げて造った、高さ約50メートル、直径約150メートルのピラミッド状の墳墓になっています。 その東西にテラスのような場があり、そこにはギリシャ神話の神々を形どった大きな石像が並んでいますが、並んでいるのは台座と胴体部分のみ。なぜか頭部は無造作に下に転がっているのです。 頭部が下にある理由については諸説あり、地震で落ちたとも、偶像崇拝を嫌って後に落とされたとも言われていますが真相はわかりません。遺跡はヘレニズム時代の特異な文化や芸術を示し、歴史的な価値が高いことから、1987年に世界遺産に登録されました。 ピラミッドは崩落しやすい構造になっているために、直接の調査もできない代わりに盗掘の被害に遭わなかったとのことで、謎は謎のまま、内部に残されています。
遺跡を見たあとは、西側のテラスから他の観光客に混ざってサンセットを待ちました。ここは東側のサンライズ、西側のサンセットが見事なことで有名で、その時間に合わせて登頂する人が多いそうです。 イスタンブルから訪れているトルコ人の女性グループに「日本から来たのか」と声をかけられましたが、トルコ語ができないために大したコミュニケーションが取れず、女性たちも残念そうにしていました。この旅では何度もそうしたことが起こり、親日国の“看板に偽り無し”を実感しています。
陽が傾いて来ました。荒涼とした山々に沈んでゆく太陽、夕陽に照らされて表情を変える巨像たち、まさに絶景です。約2000年前にここまで王の亡骸を運び、石像を作り、小石を積み上げる。どれだけの人が、どれくらいの年数をかけこのピラミッドを造ったのでしょう。まだまだ謎の多い遺跡ですが、何でもわかってしまいがちな現代において、知らないことがあること自体とても貴重に思えたのでした。