トヨタ カリーナ 2ドアセダン 1600GT(昭和46/1971年4月発売・TA12型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト063】
心臓部はトヨタ自慢のツインカム「2T-G」を搭載
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第63回目は、トヨタ ツインカム軍団の一翼を担った、カリーナ 2ドアセダン 1600GTの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】セリカ1600GTの登場から遅れること約半年、カリーナ1600GTにも2T-G型DOHCが搭載された。(全7枚)
スペシャリティカーとして人気を博することになる初代セリカのメカニカル・コンポーネンツを用いて開発されたパーソナルセダンが、カリーナである。 オーソドックスな直線基調のシャープなラインをもつセミファストバック・スタイルを採用し、リアコンビネーションランプも端正な縦長デザインを採り入れた。エンジンは4気筒OHVの1.4LのT型と1.6Lの2T型、ツインキャブ仕様の2T-B型を設定している。 このカリーナにホットバージョンの1600GTが加えられたのは、昭和46(1971)年4月のことだ。エクステリアは、4気筒OHVを積む2ドアモデルとはほとんど変わっていないものの、スケルトンタイプのワイパーや砲弾型フェンダーミラー、偏平タイヤ、オーナメントなどがわずかに異なる程度である。 だが、パワーユニットにはセリカ1600GTと同じ2T-G型DOHCが搭載され、豪快な走りを披露した。ボア85.0mm×ストローク70.0mmのショートストロークで、総排気量は1588ccになる。これにソレックス40PHHキャブを2連装して115ps/6400rpm、14.5kgm/5200rpmを絞り出す。もちろん当時の1.6Lスポーティカーとしてはトップレベルの高性能と言えるだろう。
「足のいいやつ」のコピーで鮮烈デビュー
サスペンションはマクファーソンストラットとラテラルロッド付き4リンク/コイルの組み合わせで、CMでは「足のいいやつ」を誇示した。少し詳しく解説するとマクファーソンストラットは独立式としては簡易なもので、サスペンションジオメトリー変化や剛性自体はダブルウイッシュボーンに劣る。 しかし、サスペンションストロークが長く取れ、乗り心地が良くなることや、パーツ数が少ないためにコストを抑えられるなどのメリットがある。むしろレーシングカーでもない限り、ダブルウイッシュボーンよりもストラットの方がメリットが目立つ面が多かった。 リアに採用された4リンク式は、それまでのボディの位置決めを兼ねたリーフスプリングを廃し、リアのホーシングを上下2本ずつのリンクでボディと繋ぎ前後方向の位置決めをしている。それだけではホーシングが左右にずれてしまうので、ボディとホーシングをつなぐラテラルロッド(斜行バー)で横方向の位置決めをした。これによってコイルスプリングが使用できたために乗り心地や路面追従性を高めることができた。 リジッド式のためにデフも一緒に動いてしまい、バネ下重量が重くなるが、コイルスプリングのしなやかさと相まって、良好な路面追従性を見せた。 この前後サスペンションの組み合わせは、トヨタではその後のAE86レビン/トレノまで採用される息の長いものとなる。 ちなみに同じ1.6L DOHCの2T-Gエンジンを搭載するセリカの940kgに対し、カリーナは945kgと車両重量は5kg増し。カタログ記載の最高速度もセリカの190km/hに比べ、5km/h低い185km/hに抑えられていた。 だが、足回りなど、その他のコンポーネンツは全く同一で、走り自体はなんらセリカに劣るところはなく、しかも価格は81万8000円とセリカより5万7000円も安かったので、スタイルを重要視しなければ買い得だった。 むしろそれまでスポーツカーを好んで乗っていた層が、年齢を重ねて走りも落ち着き、結婚して家族もできたときに「普段はファミリーカー、その気になればスポーツカー」として乗れる選択肢を与えてくれたとも言える。 カリーナ1600GTは昭和49(1974)年に2ドアハードトップが加わり、2ドアセダンは主役の座から降りた。だが渋好みの大人のGTは、2ドアセダンGTにとどめを刺す。