杉咲花は「孤島に咲く花」…素朴さと可憐さを両立させた”朝子”がハマリ役なワケ。『海に眠るダイヤモンド』第3話考察レビュー
神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』が放送スタートした。本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語だ。今回は、第2話のレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】杉咲花の笑顔が美しい…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『海に眠るダイヤモンド』劇中カット一覧
端島という孤島に咲く花、朝子(杉咲花)
〈ささやかな花でいい 大袈裟でなくていい ただあなたにとって価値があればいい〉 King Gnuが手がけた主題歌「ねっこ」の歌詞が、朝子(杉咲花)の心情を歌っているかのようだった『海に眠るダイヤモンド』第3話。キラキラとした外の世界に憧れる朝子の淡い初恋が描かれた。 1957年10月、端島に水道が開通する。新しい鉱員アパートや小中学校の新校舎も完成し、人口も出炭量も増えた端島は最盛期を迎えようとしていた。そんな中、端島にやってきたのが、映画プロデューサーの夏八木(渋川清彦)だ。 以前、端島を舞台に制作された映画『燃ゆる孤島』で助監督を務めていた彼は活気に満ちた今の端島で続編を作りたいと島民たちを対象に出演者オーディションを開催。新しい仕事を探す百合子(土屋太鳳)や、夏八木から直接声をかけられた朝子も参加することに。 鉱員たちの憩いの場となっている「銀座食堂」の看板娘、朝子。今まで一度も島を出たことがない朝子はすれたところがなく、明るく健気でみんなから愛されている。 華やかな世界の汚い部分も知っている夏八木からすると、端島という緑のない「孤島に咲く花」に見えたのではないだろうか。オーディションでも朝子は意外な才能を発揮し、夏八木の心をがっちりと掴んだ。
「ちょっとだけ食堂の朝子じゃない人になりたかったと」 朝子のこぼす本音に涙…。
ところが、夏八木は3人の男たちと結託して端島の組合費を盗み、忽然と姿を消してしまう。撮影所をクビになり、借金を抱えた彼ははじめからお金を盗むつもりで島を訪れていた。 オーディション話も島民の気をそらすためのカモフラージュ。映画スターになれるかもしれないという朝子の淡い期待は海の藻屑となって消えてしまった。 落ち込む朝子を、鉄平は火葬場しかない中之島に咲く桜を見に連れて行く。そこで朝子は、「映画スターになりたかったんじゃなかとよ、ちょっとだけ食堂の朝子じゃない人になりたかったと」と鉄平に思いを打ち明けた。 百合子は最初から将来が決まっている朝子を羨ましがっていたが、朝子は朝子で色んな可能性があって、何にでもなれる百合子が羨ましかったのではないだろうか。 炭鉱員や職員の家よりも貧しく、幼なじみの3人が島外の大学に進学する一方で、中学卒業してすぐに銀座食堂で働き始めた朝子。本当は流行っているものへの興味もあって、家庭用のテレビも、雑誌に載っていたようなおしゃれなワンピースも欲しかったけれど、とても手が出せなかった。