ブルゴーニュワイン、値上がり止まらず客離れ おすすめの「次の産地」はココ!
■おすすめは南ア、豪州、NZ、イタリア…
そんなときに藤巻さんがすすめるのが、ドイツ南部のファルツやバーデン州、南アフリカ南端のウォーカー・ベイ、オーストラリア南部のビクトリア州、ニュージーランド、米オレゴン州などで造られるピノ・ノワールやシャルドネだ。共通するのはいずれもブルゴーニュ同様、比較的冷涼な気候であること。これらの産地ではブルゴーニュに近い味わいのワインが多く造られているという。価格も「ブルゴーニュなら1本数万円してもおかしくないような品質のものが1万円以下で買える」と藤巻さんは話す。 沼田さんもまず、南アフリカ南部の冷涼な産地で造られたワインを推す。「南アフリカは旧世界の要素を持つ新世界と言われ、ブラインドで飲むとブルゴーニュと間違えることもある」。旧世界は欧州の産地、新世界はそれ以外の産地を指す。味わいで言うと、一般に樽(たる)のニュアンスが比較的強く感じられるのが旧世界のワインで、果実の香りが前面に出るのが新世界のワインの特徴だ。 3番目はブドウの品種が違うが、味わいがブルゴーニュに似ているワイン。大手輸入販売のエノテカが3月、イタリア・ピエモンテ州からバローロ地区の造り手など5人の生産者を招いてメディア向けのセミナーを開いた。セミナーの案内状には「“ネクスト・ブルゴーニュ”として人気が高まるその背景や地球温暖化が与える影響といった観点から、ピエモンテの今を深掘りします」と書いてあった。 ピエモンテ州はブドウ品種「ネッビオーロ」から造る赤ワインが有名。とりわけバローロ地区やバルバレスコ地区で造られ、地区名を冠した赤ワインは北イタリアを代表する高級ワインだ。ネッビオーロはもともとタンニン成分が非常に多い品種だが、最近の市場のトレンドに合わせ、タンニンをそれほど感じさせないブルゴーニュを彷彿(ほうふつ)とさせるようなスタイルのワインも増えている。 バローロ地区の生産者「ブルロット」の5代目オーナー、ファビオ・アレッサンドリアさんは「ブルゴーニュワインの価格高騰で、バローロがネクスト・ブルゴーニュとして注目されていることは感じているし、それはうれしいことだ」と述べた。そして、「ネッビオーロは確かにピノ・ノワールに比べてタンニンが強いが、味わいはエレガントで複雑な香りもあり、ピノ・ノワールと共通点は多い」と指摘する。 ワイン関係者の多くは、ブルゴーニュの値上がり傾向は当面続くと予想する。とすれば、ネクスト・ブルゴーニュはますます注目されるに違いない。ほぼ世界中で造られ、原料ブドウも商業用に栽培されているものだけで約1500種類もあるワインは、他のお酒にはない多様性が大きな魅力。これを機に、これまで飲んだことのない産地や品種のワインを試しに飲めば、ワインの新たな魅力の発見につながるかもしれない。 文:猪瀬聖(ワインジャーナリスト)
猪瀬聖
WSET認定Diploma(DipWSET)。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート/Sake Diploma。チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル。著書『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)。元日本経済新聞社ロサンゼルス支局長。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。