7~9月期GDP、大幅マイナスに悲観的になりすぎる必要はない 岡山大学准教授・釣雅雄
2014年7~9月期のGDP統計が発表となり、実質での対前期比(3ヶ月前からの変化率)が-0.4%(年率では-1.6%)となり、予想を大幅に下回ってマイナスとなりました。消費税増税の影響により落ち込んだGDPが、思ったよりも回復しなかったことで、次の消費税率引き上げ時期の先延ばしも現実味を帯びています。 このような状況で日本は、財政リスクがある中でも増税を先延ばしするのか、まずは経済状況を改善するのかの選択に迫られています。ただ、現在の経済状況について、問題はあるものの、悲観的になりすぎる必要はないと考えています。とくに消費税増税の影響を過度に見積もるのは、政策判断を誤らせます。
(1)民間在庫品増加のマイナスはむしろ良い
GDPは日本語で国内総生産といいますが、発表される統計は生産ではなく支出側のため、消費や投資、輸出入がその項目に並んでいます。生産と支出がイコールとなるように統計が作られているので、同じくGDPとして扱っています。 さて、生産(供給)と支出(需要)は、普通は一致しません。ではなぜ統計上一致するかというと、たとえば売れ残った分を、将来販売するための投資とみなしているからです。そのため、支出面に民間在庫品増加という項目があります。 今回の統計で、もし、この民間在庫品増加(寄与度-0.6%)を無視すれば、それ以外のみでの実質変化率は+0.2%(年率約0.8%)とプラスになります。 前回、消費税増税があった1997年は在庫品の積み増しが問題でしたが、今回は企業等が増税に備えて、生産調整を慎重に行ってきたのではないかと予想します。そのため、今の時期に在庫品が減少するのは、悪いことではありません。(少なくとも約1ヶ月後の2次速報の確認が必要でしょう。)
(2)名目GDPの落ち込みは問題
前回(4~6月)は、名目GDPはそれほど落ち込まなかった(対前期比-0.1%)のですが、実質GDPが大幅なマイナス(対前期比-1.9%)となりました。実質GDPは簡単にいうと量の指標です。名目の支出額は落ち込まなかったのに、物価が上昇していたので実質的な量が減少することになったのです。 前回のような結果は、現政権はリフレ政策と呼ばれる緩やかなインフレを目指す政策を採用していますので、物価が上昇して実質値が下落するのは当然です。たとえば初めに100であったものが、名目で0.7%ポイント減少したとすると、 (名目・支出額)100 -> 99.3 となります。ところが、財の価格は上昇しているため、この支出額で買える量は、より減ってしまいます。たとえば、 (実質・量)100 -> 92.9 となったとします。これは7.1%ポイントの減少です。-0.7%と-7.1%は前回4~6月期の年率での名目と実質GDPの対前期比(年率換算)です。このとき、支出額は大きくは減少していないものの、消費税率の引き上げとインフレ率上昇の2つの要因により、実質的な購入量が減ってしまったということを意味します。