「ルックス」にたっぷりお金をかけるZ世代、パーソナルケアと美容の売上を牽引
ソーシャルメディアはメイクを社会的なムーブメントに変えた。こうした流れに乗って業界の先頭をいくのが仏高級ブランドグループ、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下のSephora(セフォラ)だ。 10代を含む若年層は、少なくともベビーブーマー世代がロックンロールにハマる年になって以降、外見をよく見せることに夢中だ。今日、SNSにあふれているユーザーの「インフルエンサー」コンテンツに後押しされ、Z世代がミレニアル世代と共に世界中で美容・パーソナルケア事業の成長を牽引している。 2023年の世界の美容・パーソナルケア市場は推定約5500億ドル(約86兆8310億円)で、その4分の1を北米が占める。 予測では2030年までの年平均成長率は最大7.7%。全米小売業協会が見込んでいる2024年の小売売上高の約3%増と比較すると悪い数字ではない。 美容・パーソナルケア部門の売上が増えている主な要因は、SNS上にあるユーザーが生成したコンテンツをZ世代が受け入れていることだ。 外見をよく見せることは、いわばチームスポーツとなった。TikTokやYouTubeには、若くて13歳の10代の若者らが毎日の肌の手入れやメイクの仕方、使っている商品を紹介する動画が数多く投稿されている。 10代がシワのことで頭を悩ませているのは間違いなく気がかりなことだが、これが現代の子どもたちが生きている世界だ。自己表現の機会は限られているようで、ビデオフィルターは完全には程遠い肌を「修正」し、現実的ではない願望を生み出す。そして周りの人に良い印象を与えることはこれまで以上に重要なようだ。 コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーが昨春実施した調査では、米国のZ世代は将来、コスメなどの美容商品に金をたっぷりかけるつもりだと答えている。 この美容部門を引っ張っているのがセフォラだ。新型コロナ危機の最中にあった2020年に、米百貨店大手のKohl's(コールズ)は店舗内にセフォラの店を置くことを発表した。 この提携はセフォラにとって大当たりだった。2023年までにコールズの900以上の店舗にセフォラコーナーが設置され、現在では1000店舗を超える。その結果は驚くべきものだった。コールズに設置されたセフォラの2023年の売上は14億ドル(約2210億円)で、2025年には20億ドル(約3160億円)に達すると予想されている。 英ロンドンを拠点とする小売業界予測サービスのPass_by(パスバイ)によると、セフォラの来店者数はZ世代で20%以上増加し、X世代(44~59歳)でもほぼ同じ増加率となっている。 マッキンゼーは最新レポートで、Z世代の男性も美容部門の売上を押し上げるのに一役買っており、特にアジアで顕著だと指摘している。 マッキンゼーの調査では、アジアの男性の3分の1が定期的に化粧をすると回答し、この割合は米国では5%、欧州では10%だった。 マッキンゼーのシニアパートナーのクリスティ・ウィーバーは「Z世代が美容商品に金をかけるつもりだからといって、この業界のどの企業でも売上増が保証されるわけではない」と話す。企業は消費者と「意味のある、本物のコラボ的なつながり」を構築する必要がある。言い換えると、消費者の声に耳を傾け、消費者と共にコミュニティを築くということだ。 「美容業界を率いる企業はZ世代とともに成長し、成熟していくようにしなければならない」とウィーバーは指摘する。あらゆる小売企業にとって役立つアドバイスだ。
Greg Petro