新築マンション「売れ行き悪化」でバブルしぼむか… 「1億超えの衝撃」報道で大量発生した投資家の行方
■値引き交渉せずに即日満額で購入 ここで、中国人をはじめとした投資家がマンション買いにむかう。日本でも個人の富裕層や事業法人が検討し始め、私も多くの相談を受けた。この頃、「価格が上がると買う人が少なくなる」という需給バランスを主張する専門家がいたが、現実は逆の方向に動いている。値上がり報道が投資家を呼んでくるというのが今回の市場の実態だったのだ。 こうして、中古市場では売り出されたら値引き交渉せずに即日満額で買い付けを入れる層が出てくる。通常、物件検索サイトに載る価格は売出価格と言って、成約する価格の約2割高いものだが、意に介せずかっさらっていく。
あっという間に売れていく物件を目の当たりにし、新たに出てくる物件がさらに高い価格で売り出され、相場を吊り上げていくことを認識すると、自宅購入を検討していた買い手は焦りを隠せなくなり、「どうしたらいいのでしょう?」と嘆きの相談が増えた。 こうして、「1億超えの衝撃」は翌年の平均単価を15.8%押し上げるに至る。コロナ下よりも急ピッチな上げ幅である。それ以降、1億円超えは単月では起きていないが9000万円台後半は何度かある。今後も単月で戸当たり価格が1億円を超えてニュースになることもあろう。
しかし、報道で踊る相場は報道でしぼむ可能性がある。8カ月経過で大幅ダウンの現状を残り4カ月で取り戻せるかと言うとかなり厳しい。単純計算で半分の期間(4カ月)で昨年水準に戻すには、販売戸数で44%増、平均価格で24%上昇しなければならない。 今後、販売時期が先送りされた湾岸の大型タワー物件等の販売が10月以降に控えてはいる。これらは総じて首都圏内では割高なものの、昨年の3億円の住戸が1000戸水準で販売されるのと比較したら小粒になる。このため、昨年水準超えはほぼ不可能だろう。
■「1億超えの衝撃」で動いた投資家は消える? そうした暦年の累計値が発表されるのは2025年1月下旬になる。そこでトリプル悪化(販売戸数減少・価格下落・在庫増)となると、売れていないことを印象付けることになる。ちなみに、3つ目の販売在庫は2023年8月の4712戸に対して、2024年8月は5110戸で約400戸多くなっており、このシナリオの実現可能性は今のところ高い。 そうなると、報道で動いた投資家は蜘蛛の子を散らすように居なくなるかもしれない。この人たちの投資意欲は「先高感」によるキャピタルゲイン狙いが最も強い動機になっているので、市況悪化シグナルによる「先安感」は熱狂を冷ますには充分な理由になり得る。