旅を分解して味わい尽くす――仲野太賀×上出遼平×阿部裕介が放つ“かつてない”旅行記「すごくシンプルで良い遊び」
――旅ってものすごくシンプルなものじゃないですか。だからこそ、いろんな要素を組み合わせやすいんですかね。 仲野:そうかもしれないですね。ただ歩いてるだけですから(笑) 阿部:たしかにそうですね。僕たちは写真家、役者、ディレクターという組み合わせですが、調理師さんがいてもいいし、いろんな職業の人がいるだけ広がりますよね。僕、昔は旅って1人がカッコいいと思ってたんです。でも、十何年1人で行ってたランタン谷で、今回2人と一緒に旅をしたことで毎日新しいことを学べたので、一人旅にこだわりすぎなくてもいいかなと思うようになりました。 仲野:今回、阿部ちゃんから製本が届いたって連絡がきた時、もう大興奮だったんですよ(笑)。電話口で泣きそうになってたもんね。 阿部:自分の本を作った時よりもうれしかったんです。今回はいろんな人が関わってくれましたし、太賀くんの写真を絶対に良いものにしたいと思ってたから、出来上がったのを見て崩れ落ちました(笑) 上出:おつかれさまですー(笑) 仲野:あー来た来た(笑)
強キャラの阿部ちゃんに「めっちゃ劣等感」
――ここでMPCのお三方が勢ぞろいされました。上出さんの文章では、仲野さんと阿部ちゃんの天然エピソードが見事に描写されていますが、おふたりとしては盛られてる印象ですか? 仲野:盛られまくってますよ! 上出:盛ってないですね。「陰毛役者」の部分は事実です。 仲野:何でそれを言うかな! でも、一番盛られてるのって、伊賀さん(企画・編集協力のスタイリスト・伊賀大介氏)かもしれない(笑) ――江戸っ子丸出しのキャラクターということで、ルビで遊びまくってますね(笑) 仲野:今後もいろんな登場人物が出てくるんですよ。今回は阿部、上出、仲野ですが、続編には伊賀さんのほかに石井さんというカメラマンさんが入ってきますから。 上出:みんなキャラクターが濃いんですよ。自分にキャラクターがないって劣等感を覚えることもありますから。 仲野:今回は阿部ちゃんが強すぎて、めっちゃ劣等感ある(笑) ――先ほども言いましたが、読んでると阿部ちゃんが大好きになりますよね。上出さんは、書いているうちに阿部ちゃんを世に売り出したいみたいな気持ちもあったのですか? 上出:元々は太賀くんを前面に出した本を作ろうと思ってたんですよ。そのほうが売れるから。だけどフタを開けたらこの人(阿部氏)しか出てこなくて、もう“阿部ログ”になってる(笑)。どうにか太賀くんを出そうと思っても、自分を客観視して冷静に淡々と前を進んでいくので、そこまでのことは起こらない。一方で、阿部ちゃんのように直情的でノンブレーキだと1時間に1回は面白いことをやってくれるから。 阿部:でもこうやって本に書かれたり、Audibleで流れたりして自分のことを初めて客観視したんですけど、いろいろ学びますね。 仲野:それは良くないね。反省したら次面白くなくなっちゃうから、本読んだり、Audible聞いたりするのは禁止です(笑) ――意識しちゃって自分を抑えてしまうのは良くないですね。 阿部:でも、ニューヨークで3人で遊んで、お酒を飲まないでどこまでもテンション爆上がりした時に自分でもすごいなって思いました。 仲野:我々はめちゃくちゃ酔っ払ってるのに、同じテンションだったからすごいよね。 上出:たぶん、脳から興奮物質がずっと出てたんだと思う。 阿部:だから疲れやすいんですね。ある一瞬でドカーン!ってなれるんですけど。 上出:それが最高なんですよ。