1日1時間以上、スマホを触る人は要注意…脳科学者が警鐘「スマホが大人から奪っている大事な能力」
■「対面」と「オンライン」何が違う? 3つ目の問題点は、コミュニケーションへの影響です。わからないことがあったとき、今までなら「身近な人に聞く」「どこかに出向いて相談する」という具合に、そこには対人コミュニケーションが存在していました。 ところがスマホで調べ物をすると、「実際に人に会って対話する」という機会がなくなってしまいます。脳をいきいきと働かせるには脳トレのような脳の刺激だけでなく、社会に関わる生活習慣も非常に大切です。 人は直接会ってこそ心が通じ合うということが、科学的に立証された実験があります。コロナ禍の2020年、オンラインコミュニケーションが増えてきたときに、私は東北大学の学生たちに協力してもらい、「対面」と「オンライン」のコミュニケーションに違いはないか、緊急実験を実施しました。 同じ学部、同じ性別の5人でひとつのグループをつくってもらい、対面会話とオンライン会話の両方を行いました。話題は盛り上がるものならなんでもよし。この際、他者の気持ちを理解するときに活動する前頭前野の背内側面の活動を測りました。 ■他者に共感しているように見えても… 実験の結果、対面で会話したときにはグループのメンバー全員の脳の活動が、同じところで高まったり、下降したりしていました。他者の感情を理解し、共感して5人の脳が明らかに「同期」したのです。 一方、オンラインでは表面的には対面会話のときと同様に、笑い声も上がり、共感を示す言葉が聞かれ、和気藹々(あいあい)としているように見えたにもかかわらず、脳の活動に同期は起こりませんでした。 異なる個人の間で背内側前頭前野の活動が同期するのは、共感状態にあるときだということがほかの研究(※)で明らかになっています。対面では脳は共感状態にあることが示されていましたが、オンラインではまったくその兆候が見られませんでした。 ※Nozawaら Neuroimage 2016